2012/08/08

ロンドンphoto 20120807

<男子ケイリン ホイが大会2連覇 渡邉一成は準決勝敗退>
男女併せて全10種目で熱戦が繰り広げられてきたトラック競技も今日7日が最終日。レースは、男子ケイリン、女子オムニアム、そして女子スプリントの3種目で決勝が行われ、トラック競技全てのメダルの行方が決まった。
まずは日本期待の渡邉一成出場の男子ケイリン。この日の最初のレースとし午前10時から行われた1回戦、渡邉は前回の北京大会の覇者であり今年の世界チャンピオンであるイギリスのクリス・ホイと同じ第1組で出走となった。スタートと同時に先頭を取ったのはニュージーランドのバンベルトホーベン。その後ろにトリニダード・トバゴのフィリップがつき、渡邉は3番手。そしてその後ろにホイがつき、コロンビアのペラルタ、ロシアのボリゾフと続く。レースはペーサーが退避する残り2周半で動いた。最初に踏み出したのは、なんと渡邉の後ろ4番手につけていたホイ。周回中ホイの動きはその他全員が警戒していたものの、虚を突くような早い段階での始動に全員が浮き足立ち、渡邉もこの混乱の中最後尾に置かれてしまう。ホイは残り2周手前で先頭に出たフィリップの2番手に入り、残り1周手前で再び踏み出し主導権を取り切る。そしてそのままハイスピードで逃げ切ってフィニッシュ。場内にわき起こる歓声のボルテージは一気に最高位に達した。渡邉は残り1周で巻き返しを試みるもあえなく6着フィニッシュ。この後の敗者復活戦に勝ち上がりの望みをかけることとなった。
そして2レース各6人で行われた敗者復活戦。3着までに入れば準決勝となる2回戦に進むことができる。第2組に出場した渡邉は、周回は最後尾につけてチャンスを待つ。そしてペーサー退避後の残り2周、集団が牽制状態に入ったところで踏み出し、前5人を抜き去り残り1周手前で先頭に躍り出た。そして渡邉は最後までそのスピードを維持して1着フィニッシュ。第一の関門を突破して2回戦進出を決めた。

■渡邉一成選手の話(敗者復活戦終了後)
「レース前は緊張しました。いつもと同じレースだし顔ぶれも世界選手権やワールドカップと同じなので、いつも通りの心の準備をしてきたつもりですけどやっぱり緊張しました。1回戦はその緊張が解けないままだったので展開をうまく読めなかったです。ホイは通常よりも仕掛けが早かったのでちょっとビックリしてしまい位置取りがうまくいきませんでした。敗者復活戦の時は緊張も解け、メンバー的に脚力が抜けている選手がいなかったので、周回は最後尾でしたけど、自分から動いて主導権を取り切れば3着以内は固いと思い落ち着いてレースができました。チームスプリントが終わって間があったのでちょっと調整が難しかったですね。まだエンジンがかかりきってない感じです。2回戦までちょっと時間があるので気持ちを入れ替えて、次は力を出し惜しみしないようなレースをしたいです。」

昼のブレイクを挟んで午後の部に行われた男子ケイリン2回戦。3着までに入れば決勝進出となる。渡邉が出場する第2組のメンバーは、ドイツのレビー、オーストラリアのパーキンス、フランスのブルガンと強豪スプリンターが顔をそろえる。スタート後やや位置取りで競り合いはあったものの2周目には折り合いが付き、渡邉は4番手。先頭にはパーキンス、2番手にレビー、3番手にニュージーランドのベンベルトホーベン。そして渡邉を挟んでブルガン、ベネズエラのカネロンと続く。レースは残り2周半のペーサー退避とともに動いた。牽制状態に入った隊列から、渡邉の後ろ5番手につけていたブルガンがスパート、これにカネロンが続きレースが一気にヒートアップする。この2人の上昇で最後尾となった渡邉は、外に膨らんだ集団を見てインに進路をとる。しかし中に切れ込むほどにはスピードが伸びない。渡邉はこの混戦の集団後方でインに詰まるという最悪の形となってしまった。残り1周、渡邉は外をふさがれた状態の5番手。もうこうなってしまえば、この日の渡邉には打つ手はなかった。渡邉は最終バック過ぎにはレースを諦めた状態で6着フィニッシュ。夢と意地と思いをかけて挑んだ2度目のオリンピックは、再び悔しさだけを残して終わった。渡邉はこの後7-12位の順位決定戦に出場したが、力ない走りで5着。最終11位という結果だった。

■渡邉一成選手(全レース終了後)
「悔しさだけが残るオリンピックになりました。緊張が全てですね。いつもの自分じゃありませんでした。2回戦を走る前は感じは良かったのですが、走り出したらダメでした。展開も見えてませんでした。一度ブルガンにしめられてから頭が真っ白になりました。レースに参加できてなかったですね。原因は分からないけど、やっぱり見えないプレッシャーがあったと思いますし、自分でそれを知らないうちに高めてたのかも知れません。今はまだ先のことは考えられません。この4年間がんばってきたことが今日のこんな結果として表れたばかりなので。少し時間が欲しいです。やれることは全てやったつもりですけど、まだまだ足りなかったということだと思います。応援してくれた人たちには申し訳ない気持ちで一杯です。」

イギリスのホイ、オーストラリアのパーキンス、ドイツのレビー、マレーシアのアワン、オランダのムルダー、そしてニュージーランドのバンベルトホーベンという顔ぶれで行われた男子ケイリン決勝。レースはペーサー退避とともに3番手から踏み出したホイが残り2周となるところで主導権を取り切る。そのまま逃げの態勢に入ったホイだが、フィニッシュまでの距離はまだ長い。そして残り1周、2番手につけていたドイツの元世界チャンピオン、レビーが満を持してスパート、ホイの逃げを捕らえにかかる。しかしここからがホイのホイたる所以。並走状態のまま最終バックで一度はレビーを前に出すが、最終コーナーで再び抜き返してフィニッシュ。36歳という年齢からは考えられない驚異的なパワーを見せつけ、ケイリンでは2大会連続、今大会はチームスプリントに続いて2個目、そして生涯獲得数はイギリス記録となる6個目の金メダルを勝ち取った。2位銀メダルにはレビー、3位銅メダルは同着でムルダーとバンベルトホーベンが分け合った。

女子スプリント決勝は、大方の予想通り、前回の北京大会の覇者であり今年の世界チャンピオン、イギリスのペンデルトンと、北京大会ではペンデルトンに敗れて銀メダルとなったオーストラリアのメアーズのライバル対決となった。1回戦は激しいデッドヒートの末、逃げたペンデルトンの勝利と一度はアナウンスされたが、ペンデルトンのゴール手前の走りにスプリンターレーンを外す走行違反があり降格。続く2回戦は、心理的に優位に立ったメアーズが巧妙なレース運びでペンデルトンを追い込み、最後は逃げたペンデルトンを最終コーナーできっちりと捕らえてフィニッシュ。北京の雪辱を果たすとともに、2004年アテネ大会の500mタイムトライアルに続く自身2個目のオリンピック金メダルとなった。

女子オムニアム。これはまさに地元イギリスが作ったかのようなシナリオ通りの劇的な幕切れとなった。今日の競技が始まる時点では同ポイントでトップに並んでいたイギリス20歳のニューヒロイン、トロットとアメリカのハマーだったが、5種目目のスクラッチが終わった時点でハマーが2ポイントリード。これを最終種目の500mタイムトライアルでトロットがひっくり返した。最終組でホーム・バックに分かれて同時にトライアルの臨んだ2人。結果はリードしていたハマーが35秒990で4位。そしてトロットが35秒110で1位。これで総合順位はトロットが1ポイント逆転で金メダル獲得となった。タイム表示と順位が出た瞬間、観客は悲鳴に近い歓声を上げ、トロットの快挙を祝福した。

トラック競技は今日で全日程を終了した。イギリスは北京大会に続いてトラック競技全10種目中7種目で金メダル獲得となった。自転車競技は明日からBMXに移る。(選手強化スタッフ広報担当)