2008/08/11

北京オリンピックレポート 2008/08/10<女子ロードレース>

■女子ロード 優勝はイギリスのニコール・クック
8月10日・北京オリンピック3日目。暑さと湿度で過酷さを増した前日の男子ロードレースとはうってかわり、昨日行われた女子ロードレースは、降りしきる冷たい雨の中の死闘となった。優勝は、最終的に5人で争われたゴールスプリントを制したイギリスのニコール・クック(25)だった。日本からただ1人出場した沖美穂は最終周回上りでトップグループから離され、トップから53秒遅れの31位という成績だった。
一昨日の男子と同じく北京市中心部から北西に進み、万里の長城が壁を作る山岳地帯の周回ルートを2周回、総距離126.4kmで争われた昨日の女子ロードレース。北京市内は午前中ところどころ雨が降る天気だったが、午後は何とか持ち直し、午後2時のレーススタート時は曇り。気温28℃・湿度82%という天候だった。参加選手は33カ国から66人。3度目のオリンピック出場に悲願のメダル獲得をかける日本の沖美穂も、スタートの1時間ほど前に、スタッフとともにチームピット入りしていた。

<スタート前の沖選手のコメント>
体調は万全です。この日のために仕上げてきましたから。これが最後のオリンピックと思って北京に来たのですが、興奮も気負いもなく、これでいいのかなと思うぐらい冷静に今日を迎えた感じです。周回が2周だけなので、そこに入ってからはハイペースな展開になると思います。また序盤で数チームが逃げるという情報もあるので、もしそれが10数人のグループなら乗らないといけないし2・3人であれば最後のスプリントに備えようと思います。ポイントはやはり周回の上りですね。特に一回緩んだ後の2回目の上りは要注意です。そこでは集団の前にいることが重要ですね。今日のレースは自分のゴールなのでしっかり走りたいと思います。

レースは午後2時に北京市中心部の永定門前をスタート。1時間ほど走った辺りで天気は雨に変わった。序盤は集団に目立った動きはなく淡々とした走りが続く。沖の位置は集団前方。表情はいたって冷静だ。
スタートから2時間が過ぎ、もうすぐ周回コースに入ろうかというところで、ロシアのボヤルスカヤがアタックをかけた。ここが最初の勝負所と決めていたように、猛然とスピードを上げ独走態勢に持ち込んだボヤルスカヤ。もちろん後続の集団もこれを追ってスピードを上げる。沖の予想通り、ここまでの淡々とした走りは一転、一気にハイスピードのサバイバルレースの様相となった。雨は周回コースに入って激しさを増し、時折嵐を思わせる強い突風も吹き付ける。ボヤルスカヤは上り頂上までにおよそ1分の差をつけて逃げ続ける。後続のメイングループは、イギリス、リトアニア、スウェーデン、アメリカあたりが中心となって前を追う。沖も集団前方に位置取りチャンスの到来を待つ。下りに入ってもフルパワーでペダルを踏むボヤルスカヤ。追う集団も同様だ。雨にかすむ視界。滑りやすい路面。落車アクシデントもすでに何度か起きている。
午後4時55分、残り1周のフィニッシュラインをボヤルスカヤが通過。その後ろは、集団から抜け出したイギリスの選手が30秒ほど遅れて通過。その10秒ほど後にメイングループが通過。ここに来てメイングループを構成する人数もかなり減ってきた。このメイングループから抜け出し前を追うのはイギリスのプーリーにイタリアのグデルツォ。2人は上りに入って5分ほどでついに先頭のボヤルスカヤを捕らえる。しかしそれもつかの間、今度は後続のメイングループが前を行く3人を捕らえ、トップは再び大きな集団に戻った。そしてここから、クライマックスに向けての最後の攻防が始まった。集団からは勝負をかけたアタックが頻発。今年の10月で50歳になる驚異のベテラン、フランスのジャンニ・ロンゴも積極的にこの攻防に加わっている。
最後の上り頂上手前でイタリアのグデルツォがアタック。10秒ほどのアドバンテージで頂上を通過する。これを追って集団から抜け出したのはスウェーデンのヨハンソン、イギリスのクック、オーストリアのソーダー、そしてデンマークのセラプの4人。この4人は共同して先行するグデルツォを追い、ついに残り9Km地点で捕まえる。ここでトップに5人、後続はおよそ15秒差で15・6人の集団だ。長い下りが終わる残り1km地点、タイム差は依然15秒。勝負はトップグループ5人に絞られた。
最大限の緊張感を保ったままゴール手前の上りにさしかかった5人。そして残り200mの表示板がある辺りで5人が一斉にスパート。これを僅かの差で制したのは、イギリスのニコール・クックだった。
日本の沖は、グデルツォが抜け出した最終周回上り頂上付近での攻防で後れを取りトップグループから脱落。3度目のオリンピックを53秒遅れの31位という成績で終えた。

<ゴール後の沖選手のコメント>
我慢して我慢してついていってたのですが、最後は、集団が分かれる動きに付ききれなかったですね。でもヨーロッパでずっとやってなかったらこんなに走れなかったと思うので、今日の自分のレースには満足しています。結果は結果として見るしかないのですが、同じレースは一つもないし展開はいつも違うので、今日の結果は実力通りだと思います。力は出し切れたと思うしヨーロッパでやってきたことの証明は出来たと思います。