8月22日・北京オリンピック15日目。前日の雨はすっかり上がり、朝から雲一つ無い青空の下でのBMX再開となった。競技は女子と男子それぞれ準決勝と 決勝が行われ、女子は今年の世界選手権で2位となったフランスのアンカロリーヌ・ショソン(30)、男子は今年の世界選手権を制したラトビアのマリス・ス トロンベルグス(21)がBMX初のオリンピックチャンピオンの座に着いた。なお、午後に予定されていたマウンテンバイク女子クロスカントリーは、会場準 備やメディア対応等の関係で開催が翌日の午前中に変更となった。23日は午前10時から女子、午後3時から男子のレースが行われる。
BMX準決勝 は8人ずつ2組が3回レースを行い、各組上位4選手が決勝へ進む。その決勝は一発勝負。勝ち上がった8選手によるただ一度きりのレースで初代オリンピック チャンピオンが決まる。準決勝は女子も男子も第1走から白熱したレースが展開された。特に女子は、2年連続世界チャンピオンで、今シーズン出走した全ての レースで1着という驚異の19歳、イギリスのシャネーズ・リードが、第1走は第1コーナー手前で落車して7着。その後は立て直して第2走2着、第3走1着 で決勝進出は確保したものの、どこか気負い込んだ走りに不安を残した。そして迎えた決勝レース。リードに対抗するのはUCIランキングトップのサラ・ ウォーカー(20・ニュージーランド)に、今年の世界選手権2位の実力者アンカロリーヌ・ショソン(30・フランス)。レースは大方の予想通りスタートで リードが抜け出し、タイヤ一つ分前に出て第1コーナーに入った。しかしそのコーナー出口でスピードコントロールをミスして一瞬失速、そこを突いて先頭に出 たのがショソンだった。ショソンは第2ストレート、第3ストレートをトップで通過。その後ろからは猛然とリードが追い上げを図る。そして最終コーナー、勝 負をかけ強引にインから抜きに来たリードが、スピードを抑えきれずショソンの後輪に自分の前輪をぶつけまたしても転倒。ショソンも一瞬ふらつくが上手く立 て直してそのまま1着ゴール。初代オリンピックチャンピオンの座に着いた。ショソンはもともとBMX選手だったが1993年にマウンテンバイクに転向。ダ ウンヒルのスター選手として人気を博した。手にした世界タイトルはダウンヒル、デュアルスラローム、そしてフォークロスの3種目で合計13にものぼる。そ の後大きなケガもあって一時競技から遠ざかったが、BMXが北京オリンピックの正式種目になることが決まったのを機に、再びBMX選手として競技の世界に 復帰しこの日を目指してきた。ショソンにとって復帰後初の世界タイトルがこのオリンピックとなった。
男子で目立ったのは、やはり今年の世界チャン ピオン、マリス・ストロンベルグ(21・ラトビア)の走りだった。スタート、ジャンプ、コーナリング、全ての面で安定した走り見せ準決勝は3走とも1着。 難なく決勝進出を決めた。これに対抗するは、シーディングランでトップタイムのマイク・デイ(23)とドニー・ロビンソン(25)の強豪アメリカコンビ。 南アフリカの実力者スフィソ・ニラポ(21)。そして好調オランダのロベルト・デヴィルデ(26)。決勝レースはスタートから横一線のデッドヒートが演じ られたが、第1コーナーで第1ゲートスタートのストロンベルグがわずかに抜け出しレースをリード。これをデイが猛追しスリリングな展開は続いたが、第2ス トレート最後のジャンプから第2コーナーを出る辺りでストロンベルグが完全に抜け出し勝負を決定づけた。2位はアメリカのデイ、3位も同じくアメリカのロ ビンソン。BMXの本場アメリカでは国内のBMX人気は非常に高く、今回のオリンピック初開催に対しては多くのメディアが注目するところとなっていた。そ れだけにチームとしては金メダル獲得を絶対的な使命としてこの大会に臨んだが、その目論見はヨーロッパの小国から来たひとりのクールな若者によって外され てしまった。