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2018/02/16

2018年アジア選手権ロードレース<レポート>

2018年はプロツアーポイントとコンチネンタルレースポイントが合算される仕組となり、個人ランキングの一本化と同時に配点が見直された。大陸別選手権の配点においても、すでに2017年より男子チームTTにポイントが与えられているのに加え、全体的に配点増の変更が加えられ、特に新設の女子U23カテゴリーにもポイントが与えられることとなった。
今後、一本化されたポイントランキングの順位は即ちプロチームや様様なレースの枠取の評価となっていくであろうことが予測される。昨年11月に男子国別ランキングポイント目標1500点と設定したが、さらに積み増さなければならないであろう。
日本チームとしては世界選手権の複数人出場枠獲得に関わる国別ランキングのために重要な大会として参加し、男子はその目標を達成出来た。女子に於いてはU23を急遽召集したことと、ランキングの持つ重要性が日本チームとしても個人としても男子に比して軽いためか、他のアジアの国に比べ意識と組織的強化に課題があり、未熟なカテゴリー全てを一人のコーチが担当する形になっていることを含め対策すべきと認識させられた。
2018年2月15日   三宅秀一郎

大会名  2018年ロードアジア選手権大会
大会期間 2018年2月8日~2月12日
派遣期間 2018年2月3日~2月13日
大会場所 ミャンマー・ネビトー

各レースのレポート
男子エリート・男子U23:浅田顕ヘッドコーチ
女子エリート・女子U23・男女ジュニア:柿木孝之コーチ     

2月8日 チームタイムトライアル 男子エリート・男子U23(70km)
1 日本(新城・別府・小野寺・山本・松田・畑中)1:23:15.556
2 イラン 1:23:41.705
3 ホンコンコメントチャイナ 1:24:14.020

アジア選手権に採用され2回目を迎える種目。昨年はカザフスタンに敗れ2位に終わっているが、国の競技力を象徴する重要な種目として今年も再チャレンジ。コースは数か所の登り区間はあるが全体的にはフラットな直線区間が多くハイスピードな設定。新城幸也、別府史之、畑中勇介、小野寺玲、松田祥位、山本大喜で構成したチームは予定通りのペース配分とチームワークで一定ペースを保ち約50㎞/hの平均スピードで70㎞を走り切り優勝した。経験と牽引力の高いプロツアー所属の2人と事前に準備を重ねた若手を含む国内メンバーとの足並みがそろい良い結果をもたらした。

2月9日 個人タイムトライアル 男子U23(34km)
1 SHI Hang(中国) 40:46.654
2 FUNG Ka Hoo(香港) 41:06.863
3 松田 祥位 42:13.865

コースは道幅が広く緩やかなアップダウンとフラットで構成される往復コース。参加した松田祥位はチームTT翌日という事もあり疲労が残る中ではあるが、予定通りのペース配分とコース取りで走り切り3位入賞を果たした。トップタイムとは大きな差があり、この種目では9月世界選手権に向けて準備をして行きたい。

2月10日 個人タイムトライアル 男子エリート(42km)
1 CHEUNG, King Lok(香港) 49:53.649
2 CHOE, Hyeongmin (韓国)49:56.312
3 MOAZAMI GODARZI, Arvin(イラン) 50:52.621
4 別府 史之 51:19.358

コースはU23同様道幅が広く緩やかなアップダウンとフラットで構成される往復コース。参加した別府史之は序盤ペースを押さえながら徐々にペースを整えコンスタントに距離を消化し後半に入る。しかし一部コースミスにより恐らく数十秒のタイムロスをしてしまい結果4位でのゴールとなった。コースは先導バイクも付かず立哨のガイドもない状況で、タイムトライアルでは各カテゴリーを通じミスコースが目立った。

2月11日 男子U23ロードレース(156km)
1 山本 大喜 3:34:05
2 GANJKHANLOU Mohammad(イラン) 3:34:05
3 SAINBAYAR Jambaljamts(モンゴル) 3:34:08
4 石上 優大 3:34:13
10 草場 啓吾 3:34:44
14 渡邉  歩 3:34:44

序盤平坦を走り中盤から短いアップダウン集団にはスピードコースながら破壊力のある登り区間も設定される156㎞のロードコース。U23-4年名の山本大喜、草場啓吾、3年目の石上優大、2年目の渡邊歩で構成した日本チームは作戦通りライバルチームの動きに合わせレースを進め、勝負どころでは予定通り山本と石上を先頭グループに残し、最後は石上の積極的な攻撃でチームは優位に展開し山本が優勝、石上が4位という好成績を残した。草場と渡辺も終始チームプレーに徹し勝利に大きく貢献した。

2月12日 エリート男子ロードレース(170km)
1 MIRZA AL-HAMMADI Yousif Mohamed Ahmed (UAE) 3:50:32
2 別府 史之 3:50:32
3 SOHRABI Mehdi (イラン) 3:50:32
5 新城 幸也 3:51:10
16 畑中 勇介 3:54:53
26 小野寺 玲 3:56:13

今回のメインレースとなるエリートロードレースはU23のコースとほぼ同じレイアウトで、折り返し地点の延長により20㎞長い170㎞の全長となる。別府史之、新城幸也、畑中勇介、そして体調を崩した中根に代わりTTTを走った小野寺で構成したチームは序盤から活発なアタック合戦に対し4人がほぼ均等に対応し約30㎞地点で新城を含む10名程が先行グループを形成。対する集団は逃げ遅れたチームを中心にペースを作り約70㎞地点のアップダウン区間が始まるあたりで吸収。次いで今度は別府を含む各国一人ずつ計7名のグループが先行し逃げ切りを目指す。後続グループでは残ったメンバーで注意選手の攻撃を封じ込めながら距離を消化。先頭グループはラスト15㎞の登りで別府がアタックし4名に絞る。その後牽制しながらの展開はゴールスプリントに持ち込まれる。別府、イラン、UAE、そして終始先頭交代を拒んできた香港の4名の中、約150mから別府が先行するがゴール前プロツアー所属のUAE代表選手に追い込まれ2位でのゴールとなった。新城は後続集団から要注意選手らを置き去りにし強烈な追い上げで5位まで食い込んだ。優勝を逃したのは残念だが4名が一致団結し主導的なレース運びで好成績を残したことは成功と考えたい。

エリート男子&U23男子総評
アジア選手権の出場目的はタイトル獲得と同等に各世界大会出場に向けたUCIポイント獲得にある。U23男子は豊作だった昨年からメンバーも変わり戦力不足が心配であったが、合宿や準備レースなど適切な準備と選手の高い意欲により昨年同等の成績を残すことが出来た。シーズンのピークレースとなる世界選手権ロード、ツール・ド・ラブニール出場権獲得に向けて好スタートを切ったと言える。エリート男子はチームを引っ張るプロツアー所属の2人が強いマークを受ける中、好成績によりUCIポイントを稼ぎ、こちらも目標の世界選手権ロード出場3人枠獲得に向けて好スタートを切った。エリートとU23合同チームとなったチームタイムトライアルの快勝から始まり全種目での上位入賞により両カテゴリーを通じ非常に成果の高い今年のアジア選手権となった。(浅田 顕)

女子エリート・女子U23・ジュニア男子・ジュニア女子
エリート女子ロードレース(106km)

1 NGUYEN Thi That VIE 3:11:59
2 HUANG Ting Ying TPE 3:11:59
3 CHANG Yao TPE 3:11:59
4 吉川 美穂(和歌山・Live GARDEN BICI STELLE)3:11:59
10 唐見実世子(茨城・弱虫ペダルサイクリングチーム)3:11:59
21 樫木 祥子(東京・株式会社オーエンス)3:12:07
22 福田 咲絵(神奈川・慶應義塾大学/フィッツ)3:12:07

12時過ぎにスタートし、ラスト18kmまでは集団有利な平坦コースと35℃の気温もありスローペースでレースは進む。ラスト18km地点2kmの登りで中国のPU選手がアタックし、唐見含む11名の先頭グループが形成される。台湾2名、ベトナム1名、韓国3名、イラン1名、中国2名、香港1名。唐見は孤軍奮闘しラスト5kmで自らアタック。集団は分断しかけたが、乗り遅れまいと韓国が必死に追走し逃げられない。ラスト1.5kmで遅れていた吉川が先頭集団に合流する。唐見がスプリンターである吉川を集団前方まで引っ張り上げたが、自ら合流に脚を使った吉川のスプリントに本来の力はなかった。ベトナムのNGUYEN Thi Thatがラスト18kmから先頭集団でも力を見せ続け、強力なスプリントで圧勝した。
日本チームは勝負所の登り区間で出来た先頭集団に複数人を送り込めず、唐見1人になってしまった。ラスト1.5kmで先頭集団に追いついた10名ほどの追走グループに福田、樫木、吉川がいたがスプリンターの吉川自身が脚を使う形になってしまい、チームの力を結果に結びつけるという意識に課題が残った。

ジュニア男子ロードレース(106km)
1 日野 泰静(愛媛・松山城南高校)2:32:38
2 KROG Rex Luis PHI 2:32:49
3 SAENKHAMWONG Wachirawit THA 2:33:01
10 鳥倉 必勝(神奈川・SBC Vertex Racing Team)2:33:01
15 山本 哲央(山梨・韮崎高校)2:33:01
22 香山 飛龍(神奈川・横浜高校)2:33:01

エリート女子と同じ106kmの平坦基調のコースで、ラスト20kmで勝負が決まると予想された。ラスト18kmの登りで香山とカザフスタンの動きで集団は伸びて分裂する。長く伸びた集団で4名全員を先頭集団に残した日本は波状攻撃を仕掛け、後手を踏むことはなく集団内の選手を休ませない。ラスト8kmあたりでベトナムが一人逃げをしたが、山本が全牽きして逃さない。ラスト5kmの緩い登り直後のガタガタ道区間で狙いまして日野が攻撃をかけフィリピンと抜け出す。それまでの展開で疲れた集団とは一気にタイム差が開き2名で勝負が決まる。ゴール前のスプリント開始準備をする日野からフィリピンが遅れはじめ、そのままスパートを決めて優勝した。エース日野のためにチームでコミュニケーションを取り続け非常にまとまりのある走りを見せ完勝した。

ジュニア女子ロードレース(70km)
1 CHIU Vivien HKG 1:59:40
2 岩元 杏奈(宮崎・都城工業高校) 1:59:40
3 KURNOSSOVA Marina KAZ 1:59:40
7 石上 夢乃(神奈川 横浜創学館高校) 1:59:40
12 川口うらら(兵庫・龍野高校)1:59:44
15 太郎田水桜(東京・東京成徳大学高校)1:59:47

TTTのコースと同じ70kmのコースで、中盤から道の悪いアップダウン区間、ラスト18kmの登り区間からが勝負所となる。非常に暑い時間帯のレースということもあり、前半の平坦区間で動くチームは予想通り出てこない。アップダウンの登り区間で川口のペースアップで集団から遅れる選手も出てくる。ラスト18kmの登りで川口がペースアップし集団が小さくなる。この登りで遅れた岩元はラスト12kmで単独復帰し日本のみが先頭集団に4名を残す。しかし数的有利を生かせず逆に攻撃を受け、集団内は日本チームが追走させられるのをほかのチームが待つ形に。ラスト8kmでカザフの単独逃げが決まり、太郎田を中心に追いかける。その後もほかのチームの攻撃が起こるが日本チームはうまく連携できず後手を踏む。ラスト4kmはサイクリングペースとなり、最後はスプリント勝負となる。ラスト800mからスプリントを開始した香港の選手を岩元が追いかけそのままダッシュ。岩元は集団から少しリードした状態で単独となる。ラスト500mでコースミスもあり、最後の30mで香港の選手に刺され優勝を逃した。
優勝を狙える展開、チーム力を揃えていただけにチームの歯車が上手くかみ合わず残念な2位となった。

U23女子ロードレース(70km)
1 LIU Zixin CHN 1:59:45
2 SUN Jiajun CHN 1:59:50
3 NGUYEN Mai Thi Thu VIE 1:59:56
6 中井 彩子(宮崎・鹿屋体育大学)2:02:25
8 下山美寿々(大阪・大阪教育大学附属天王寺高校)2:03:22
12 菅原 朱音(鳥取・八戸学院大学)2:09:49

ジュニア女子と同じ70kmのコースで争われた。15kmほどでイランの一人逃げが決まる。勢い良いアタックで1分以上のタイム差をつけるが、登りで集団のペースがあがると一気にタイム差は縮まる。アップダウン区間での中国の動きでこぼれる選手が多く出始め、先頭集団は9名に。香港、中国2名、タイ、ベトナム2名、マレーシア1名、日本からは中井と下山が入る。ラスト30kmあたりでベトナムの選手が様子見しながらするすると集団から抜け出しそのまま逃げる。30秒差タイム差がついたところで優勝候補のTTでも優勝した中国がラスト25kmでラインを変えてアタック。何故か日本の2名はそれを見ながらも全く反応しない。その後タイとマレーシアと下山の3名が回して先行選手を追い登り口へ。前2名とは徐々にタイム差がついて行く。もう一人の優勝候補の香港の選手はローテに入らず中井の後ろでお休み。登りまで下山が牽いて力尽きるとそこから中井、香港が牽き、勾配が緩いところで中井が先頭固定で前とのタイム差を縮めるが、その後ろから香港、ベトナムにアタック気味に前にブリッジをかけられ、引いていた中井は遅れる。その後中井はマレーシアともう1名で走り6位。
中井は力負けしたわけではなく、状況に対して判断と対応が出来ずに上位陣との勝負に絡めなかった。

エリート女子個人タイムトライアル(22km)
1位 LEE Jumi KOR 31:02.422
2位 HUANG Ting Ying TPE 31:53.084
3位 唐見実世子(茨城・弱虫ペダルサイクリングチーム)32:18.127

22kmのアップダウンコースで唐見美世子は実力を出し切り3位に入った。ペース配分もコース取りもよく、優勝したLEEにはタイム差をつけられたがロードに向けて良いコンディションであることが伺えた。

U23女子個人タイムトライアル(22km)
1位 LIU Zixin CHN 32:01.804
2位 LEUNG Wing Yee HKG 32:02.151
3位 MOHAMAD ZUBIR Nur Aisyah MAS 33:00.509
5位 中井 彩子(宮崎・鹿屋体育大学)33:46.387

エリート女子と同じコースで、中井彩子が参加した。コース取り、使うギアの使い方等、改善点が多く5位にとどまった。

ジュニア男子個人タイムトライアル(22km)
1位 PRONSKIY Daniil KAZ 29:21.246
2位 CHU Tsun Wai HKG 29:54.554
3位 HUYNH Minh Nghia VIE 30:32.038
5位 山本 哲央(山梨・韮崎高校)31:01.254

エリート女子と同じ22kmで、山本哲央が参加した。前半まではペース配分もよかったが、中間地点手前から熱中症のような状態でペースを乱し、フラフラとした走りになってしまい5位に終わった。

ジュニア女子個人タイムトライアル(10.8km)
1位 KURNOSSOVA Marina KAZ 15:42.238
2位 石上 夢乃(神奈川・横浜創学館高校)16:14.125
3位 LEE Sze Wing HKG 16:14.266

事前のコースがキャンセルされスタート30分前にコースが決まった。2.7kmの周回を4周する10.8kmのコースに石上夢乃が参加した。単調な長方形のコースながら強い追い風と強い向かい風区間があり、ペース配分が難しいコースで石上はペース配分もよく2位となったが、カザフスタンの選手の力は1人ずば抜けていた。(柿木孝之)