UCIロード世界選手権インスブルック・チロル大会、9月27日(木)第5日目は午前中にジュニア女子、午後にジュニア男子のロードレースが開催された。
ジュニア女子はラッテンベルグからスタートし、インスブルックの周回コースを1周回してフィニッシュラインに向かう70.8kmのレースで、MTBクロスカントリー・女子ジュニアのアジアチャンピオンである川口うらら(兵庫・龍野高校)と全日本選手権ロードレース・女子ジュニア2位の中冨尚子(京都・京都産業大学)が出場した。スタートすると25km地点の登坂区間グナーデンヴァルトで早くもレースは動き始めた。勾配の厳しい登りの中腹で集団はいくつもの小集団に分裂され、川口は4番目の集団、約20番手ほどで山頂を通過し、その後の下り区間で形成された25名ほどの先頭集団に入ったが、一方の中冨はこの登りで大きく遅れてしまった。周回コースに入り、7.9kmの長い登坂区間で再び集団はペースアップ。最後は4選手によるゴールスプリントの展開となり、開催国オーストリアのラウラ・スティガー(STIGGER Laura)が優勝した。スティガーはMTBクロスカントリー世界選手権女子ジュニアカテゴリーで二連覇中。川口は4分7秒差の23位、中冨は15分46秒差の87位だった。川口は初めて出場する世界クラスのロードレースで、終盤までメイン集団に残る好成績を挙げた。
ジュニア男子は、クーフシュタインからスタートし、インスブルックの周回コースを2周回する131.8km。日本からはUCIネイションズカップでの遠征経験をもつ、日野泰静(愛媛・松山城南高校)、馬越裕之(奈良・榛生昇陽高校)、福田圭晃(神奈川・横浜高校)、香山飛龍(神奈川・横浜高校)、小野寺慶(栃木・ブラウ・ブリッツェン)の5名が出場。2年連続で世界選手権に出場する小野寺と好調な日野を軸に戦う作戦にてスタートした。毎年、男子ジュニアカテゴリーでは多くの落車が発生しているが、今年も中盤65km地点付近の登坂区間グナーデンヴァルトまでに2つの大きな集団落車が発生。ナショナルチームも小野寺を除く4選手がいずれかの落車に巻き込まれ、小野寺も落車しなかったものの、指を負傷するトラブルに見舞われた。落車の影響もあり、グナーデンヴァルトでは女子同様に集団は細分化。絶対的優勝候補のレムコ・イヴェネプール(ベルギー)も落車により先頭から遅れて、山頂を通過した。日本人選手は福田と小野寺が50番手ほどの小集団に残ったが、ほかの日本人選手はここで大きく遅れ、最終周回を前にリタイアとなった。後方から追い上げたイヴェネプールは、周回コースに入るとドイツの選手とともに先行をはじめ、その後、独走にて優勝。個人タイムトライアルに続く、二冠達成となった。小野寺は遅れながらもベストを尽くして走り、日本チーム唯一の完走となる17分28秒差の51位でフィニッシュした。福田も諦めずに走り続け、フィニッシュラインを越えたが、オーバータイムによりリタイア扱いとなった。
●柿木孝之コーチのコメント
ジュニア女子はいつも世界でどのくらい走れるかわからないなかでの参戦になるが、ヨーロッパのレースを走った経験のない川口選手は一つ目の登りで遅れず、先頭集団に入ることができて良かった。二つ目の登りでパワーの差で遅れてしまったが、しっかりと登り口で前にいることができた。今後が非常に楽しみな結果となった。中冨選手は位置どりで脚を使ってしまったが、日本にいたら勉強できないことで、今回初めて本当のロードレースを経験できた。今後、ロードレースで強くなるにはどうしたらいいか、考えるきっかけになると思う。
ジュニア男子は、今年多くのネイションズカップに遠征し、その結果、総合で11位、過去最高のポイントを獲得でき、チームカーも10番目だった。落車が起こることはわかっていたので、チームでまとまらず、リスク回避をしたが、2回の落車にほとんどの選手が巻き込まれたのは良くなかった。小野寺選手も落車しないものの、上りで一度止まって追いつくのに力を使ってしまった。世界選手権というのがどれだけ厳しいものか、他の国と比べて心の準備ができていなかったと感じている。強くなることに貪欲になることは、選手にとって一番肝心な部分だと思う。世界で戦う覚悟が他の国の選手と比べて足りていなかった。準備段階、気持ちの面で課題が残る結果だった。
●川口うらら(兵庫・龍野高校)のコメント
世界の舞台でロードレースを走ったことがなかったので、どのくらい走れるかわからなかったけど、全力を尽くすことを目標にして走り、力を出し切ることができた。マウンテンバイクの世界選手権がシーズン最大の目標だったが、そこで100%の力を出せなかった悔しさがあった。もう一度、ロードレースで世界の舞台で戦わせてもらえる機会を得たので、リベンジするような気持ちで挑み、自分が納得できる走りができたので良かった。今回のチャンピオンはマウンテンバイクの世界チャンピオンでもあるので、マウンテンバイクとロードレース、両方やることで相乗効果があると思っている。しっかり両方の種目と向き合い、どちらも強くなりたい。
●小野寺慶(栃木・ブラウ・ブリッツェン)のコメント
集団の密度が高く、最初から前にいないといけないとわかっていた。中盤の登りで前にいられたが、強豪国のトレインに挟まれる形となり、転びかけて前にいた選手のホイールに手の指を挟んでしまった。そこで一瞬遅れていまい、急勾配のところで急いで戻ろうと脚を使ってしまった。追いついたが、そこからズルズルと後退してしまった。周回コースに入ってからは、指だけでなく、身体のバランスも崩れて腰も痛くて、うまく踏み込むことができず、力を出し切ることができなかった。一瞬の出来事で、レースを無駄にしてしまったのが悔しい。今シーズン通して登りを強化してきた。今回は力を出し切れなかったが、アンダーに上がる来年、再来年でさらに登りに強い選手になっていきたい。
●レース結果
女子ジュニア ロードレース
1 ラウラ・スティガー/STIGGER Laura (オーストリア) 1:56:26
23 川口うらら/KAWAGUCHI Urara (日本) +4:07
87 中冨尚子/NAKATOMI Shoko (日本) +15:46
/出走102人
男子ジュニア ロードレース
1 レムコ・イヴェネプール/EVENEPOEL Remco (べルギー) 3:03:49
51 小野寺慶/ONODERA Kei (日本) +17:28
DNF 福田圭晃、香山飛龍、日野泰静、馬越裕之
/出走159人