明けましておめでとうございます。
2018年は個々の選手のUCIポイント・保有選手とも増加し、アジア選手権・アジア大会ではほぼ全カテゴリーでメダルを獲得し、ロードナショナルチームは好調に見えました。その一方で、世界選手権では世界との大きな差を見せつけられました。
国内やアジアのレベルと世界のレベルが異なることは以前から指摘されています。UCIランキングのポイント配点が昨年大きく変更(TTTへのポイント付与、アジア選手権・アジア大会・全日本選手権のポイント増加、UCIレースでは下位までポイント付与、U23女子カテゴリー新設により新たにポイント付与。)されましたが、この変更によりポイントの取得自体が容易になっただけに過ぎないことをよく理解する必要があります。残念なことに2018年末での日本の国別ランキングは男子エリート31位、女子エリート29位と競争力が向上したとは言えない結果でした。
男子についてはこれまで国内に多数あるコンチネンタルチームに世界選手権参加枠のためランキングポイントの取得をお願いしてきましたが、全日本選手権・アジア選手権のポイントを除いたポイントを見るとかなり厳しい状況です。
女子については世界ではワールドツアーが本格稼働し、中国や東南アジア各地でUCIレースが行われ、世界的にレベルが急速に向上しはじめています。一方国内ではチームエントリー可能な人数がいるクラブチームすら存在せず、ロードレースを個々人のレースとしか考えられない、旧態のままのレース展開しか経験できないこの様なチームの実態では現状では世界から(アジアからすら)取り残される不安を禁じ得ません。
男女ともロードレース最高峰であるワールドツアーレースを走る選手を増やすことが国際競争力向上の唯一の方策と考えます。咋年に限らず、そのための努力を幾つか試しましたが結果を出すに至っていません。
従って2019年のナショナルチームは、男女ともに2020年五輪とそれ以降を区分して別の方策を取らざるを得ないと考えています。
2019年男子についてですが、2020年五輪に対して既発表の選考基準によりアジア選手権や全日本選手権の順位よりもワールドツアーや欧州でのレース結果を重視し、出場するだけの選手では無く世界と戦える選手を選ぶ方針を明確にしています。競技レベルの違いから、日本・アジアで獲得するUCIポイントと、ワールドツアーや欧州ポイントとを同じスケールで評価する事が出来ないこと、さらにはオリンピックや世界選手権で活躍できるという裏付けは、まずは同じ顔ぶれで争われるワールドツアーでの実績であり、その次に世界での実力評価の高い欧州ツアーでの活躍であることからこのような選考基準としました。
これは各選手に対しての高い目標を持ってもらいたいというメッセージでもあります。
世界選手権そのものは勿論五輪につながるレースとしても重要です。出場人数枠獲得ポイント獲得のためとプロツアー選手から若い選手が学ぶ場として、エリート・U23混合ナショナルチームをUCIレースに派遣する予定です。
また、プロチーム(プロツアーとプロコン)に入るにはU23までの新人以外は厳しいことから、これまでもネイションズカップに参加してきましたが、人的資源と費用をプロチームを目指す意識の高いジュニアとU23選手により集中します。そしてこれまでのような高校・大学・クラブチーム・年代カテゴリーそれぞれの方針や重視することが異なることにより強化が途切れることが無いように、一貫した、また1年の成績ではなく数年での成長可能性を睨んだ強化をして行く方針です。
そしてレベルの高いレースに参加しなくても出来ることとして、世界に対して劣っていると思われるTTに関してもより重視していくこととします。
女子も男子と同様、五輪選考基準はアジア選手権や全日本選手権の順位よりもワールドツアーや欧州でのレース結果を重視します。しかし男子と違い、UCIポイントでの選考にすると、ヨーロッパ・アメリカでのポイント獲得の難易度がアジア・日本とは比較にならないというだけではなく、そもそも世界全体の女子の層が厚いとは言えない現状で、ワールドツアーレースの中にも強豪チームの参加が少ないレースがあったり、また集団ゴールの場合等でアシスト系選手が最後流してしまうことで、実力以上の着位・ポイント獲得ができてしまうレースがあるように見受けられます。このため男子のようにUCIポイントやヨーロッパのレースポイントに係数をかけ、アジアのポイントに対して単純に増やすだけでは、五輪で戦える女子選手の選考には適さないと考えています。このため登坂能力が必要な五輪コースで世界レベルと勝負できる選手か否かを判断し得るレースを特定し、その順位を基準としました。
これは「順位目標に挑戦してほしい」・「対象レースに出場できるチームに入ることを目標にしてほしい」とのメッセージです。
ただし、この順位基準を満たす選手が1人も居ない事も考えられることから、念のため全日本選手権やUCIポイントランキングも基準に加えてあります。
女子はやっとエリート選手の一部がチームとしてのロードレースを理解しはじめ、ワールドツアー参加チーム在籍者や欧州クラブチームの在籍者も複数出てきました。
しかしジュニア・U23 ・エリートすべてのカテゴリーで人数・層とも著しく薄く、発掘に力を割き、ユース・ジュニア層を少し長い目で育てる意識が必要と考えています。女子ジュニアに於いてもネイションズカップ行われていますので、早急にそれに参加できる状況を作らなければなりません。
本来はナショナルチームではなく、選手やチームが個別で世界に出て行くことが望ましいのですが、引き続き国内のエリート選手には合宿やUCIレース派遣を通じて世界のレースを勉強してもらう事を主眼とします。前述のように海外ではワールドツアーやアジアのUCIレース開催と乗り遅れてはならない波が来ていますので、実践勉強という趣旨でそれらのレースへの派遣も極力行いたいと考えています。
2019/01/25
ロード部会 部会長 三宅 秀一郎