2010/05/25

Course de la Paix Juniorsレポート

日本代表選手団5月5日から9日までチェコで行なわれた第39回Course de la Paix Juniors(ジュニアカテゴリーのネイションズカップ2戦目)にジュニアナショナルチームが参加した。ジュニア強化指定選手の中から登り、下りをこなせる6選手を選出して、4月中旬には5日間の合宿を行ないこのレースに備えた。
出場選手は、黒枝一枝、六峰亘、長瀬幸治、西川尚吾、中井俊亮、池部壮太の6名。

参加チームはネイションズポイント獲得上位国の世界の強豪26チームで参加選手は156人。昨年のジュニア世界選ロード優勝者も参加している。このレースは非常に歴史のあるレースであり、優勝者の多くがプロで活躍している。レース前に過去に何度もこのレースに参加しているチームの監督らに聞くと、どの監督も「登りはもちろん厳しいが、横風で集団が分断されることが多い」と口を揃える。

第1ステージはLitomericeの街をスタートして27.5kmの周回を3周してまたスタート地点に戻ってゴールする95.5km。周回は登りが4kmほど続く箇所もあるアップダウンコースで、国内のレースならば登りの強い選手が勝つコースではあるが、ゴールまで最後の登りから20kmほどあるのでスプリント勝負になることが予想される。ラスト1.5kmからは日本のジュニア選手にはあまり経験のないロータリーが3箇所あり、集団スプリントの際にはこのロータリーに入る前に集団の前にいることが求められ、午前中にコースの試走を行い、選手も登り部分とゴール前の下見は行なうことが出来た。
レースはスタートしてすぐにペースが上がり、そのまま周回に入る。登りが始まるところで西川が落車に巻きこまれストップ。怪我もトラブルもなくすぐに走りだしたが集団は登りでペースが上がり、数名の選手らと追いかけるが次第に離されていく。午前の試走から脚の痛みを訴えていた池部も登りで遅れ、その後西川らの小グループにも抜かれそのままリタイア。レースはデンマーク、ドイツ、チェコ、ポルトガルがアタックを続ける。27km地点で六峰がスローパンクということで後輪交換。ただ路面が悪くてパンクしたと思ってしまったようで、実際はパンクしておらず無駄な脚を使うことになる。6kmほどで集団に追いつくが、集団は登りでペースが上がり脱落。集団ではアタックがかかり15名ほどが先行。最大40秒差をつけるが集団のスピードも落ちず65km過ぎに集団は一体になり最終回の登りに入っていく。最後の登りで長瀬がアタックを仕掛け、山岳ポイントをトップ通過してそのまま下りへ。そこへベルギーの世界チャンピオン、チェコ、イギリス、オランダの選手らが合流して6名の逃げになり集団に15秒ほど差をつけてゴールへ向けてのアップダウンを進む。しかし前が見通せる道で後ろの集団もペースが上がり、また集団は一体に。単発アタックもあるがどれも決まらずそのまま集団ゴールへ。スプリント力のある黒枝、中井に期待がかかるがゴール前のロータリーでの落車に黒枝が引っかかりスプリント出来ない。優勝はスプリントで抜群のスピードを見せたDanny Van Poppel。中井が23位。この日3つ設定された山岳賞を1度1位通過した長瀬が山岳ポイントで3位につける。

第2ステージ MostをスタートしてLitvinovへゴールする98,3km。スタート後20kmで標高差500m登る峠と70km過ぎから600m登る峠があり、2つ目の峠を登り、そのまま下ってゴールなので登りに強い選手が動く1日になる。そしてチェコは道も悪くさらにこの日は雨ということで下りのテクニックも非常に要求されることになる。
スタートしてしばらくは団子状態でしたが、緩い登りで8人が先行。その後、2,3名ずつパラパラアタックがかかり25km地点あたりから始まる大きな登り区間前に15名ほどが先行。コースマップでは25kmから登りになるのだが、それ以前からジワジワ登っていくコース。道も悪く雨も激しくなりパンク、メカトラが各チームに続出。15名ほどの逃げグループも3名がパンクの犠牲に。本格的な登りが始まり遅れる選手が多くなる中、こぼれてくる選手に日本の選手は見当たらない。最初の登りを超えた段階でグループはいくつかに分かれるがその後の平坦で集団は再編成され、長瀬、六峰はメイングループに、黒枝、西川、中井は後ろのグループに。集団も長く伸び、道も狭いのでチームカーが長瀬らの先頭グループまでなかなか上げさせてもらえない。その間もパンクが続出で、ニュートラルカーのホイールも尽きたのか、前のグループのパンクした選手も数分間ホイール待ちの状態の選手が多く見られる。運よく日本の選手はここまでパンクは一人もいない。2度目の登りに入る直前でようやく長瀬らのグループの後ろまでチームカーを進めることができたが、登り口の狭い道で集団先頭付近を走っていた長瀬がパンク。運悪く工事区間箇所でチームカーもなかなか上がれず、大幅にタイムロスしたものの諦めずにこぼれてきた前の選手をパスしていく。長い登りをそれほど得意としていない六峰も登りでバラバラになった集団で粘り続ける。レースはチェコ、ロシアの選手が逃げ、そこにスロベニア、デンマークの選手らが合流して最後の下り区間へ。この下りも危険で多くの選手がコーナーで転がっており、草むらから自転車抱えて現れる選手を数人目撃。レースは結局下りで抜け出したロシアのEvgeniy Shalunov。六峰は集団らしい集団がなくなるような厳しいレースで2分47秒遅れの47位。不運であった長瀬は最後の下りでも転んでいたようで、7分以上遅れてゴール。黒枝、中井、西川らは11分以上遅れてゴール。この日の日本チームは長瀬のパンク以外のトラブルはなかったが、他のチームは常にパンク、メカトラ,落車で大変な状態であった。

第3ステージは午前のTTと午後のロードレースと2つのセミステージで行なわれた。
午前に行なわれたTrebeniceをスタートゴールする多少の登りを含む平坦基調の11.6kmの個人タイムトライアルでは総合順位の関係で中井、黒枝が続いて出走することになり黒枝のみチームカーから走りを見ることは出来なかった。前日に選手はコースの下見を車でしてあったのだが、その黒枝が途中コースをミスして大幅にタイムを失う。優勝はポルトガルのRaffael Reisで14分51秒。長瀬が1分33秒遅れで82位が日本選手の最高位。日本の選手はノーマルバイクにアタッチメントバーとディスク、エアロヘルメットであったが、他の国のほとんどがTTバイクを使用していた。しかし機材以上にこのタイム差は脚の差によるものであり、昨年同様日本の選手の独走力の強化が非常に重要である。このタイムトライアルでタイムアウトになる選手も5人おり、西川もあと20秒遅れていたらタイムアウトであった。
午後はRoudnice n.Labemをスタートして1周19kmの周回を5周する97kmのレース。標高差100mほどの登り坂もあるが、スピードマンに有利なコース。登りで力勝負するには厳しい日本の選手にとってこのステージは非常にチャンスのあるレース。
このステージは前半から集団のペースも速く、オランダ、イギリス、カザフスタン、イタリア、ドイツらを含む先頭集団が出来るが30秒以上は離れず1周もたずに集団は一つに。その後カザフスタン、イギリスの2人逃げが決まりその後も追撃アタックがかかり、集団は速いスピードで流れ、3周目には集団はまた一つに。この周にまたカザフスタンとフランス選手の逃げが決まり、集団は落ち着き1分ほどの差がつく。4周目に黒枝が落車に引っかかり、メイン集団から遅れたグループに取り残される。追いつきそうではあったがメイングループもアタックがかかり速い展開になり追いつけず。4周目中盤に6名の先頭グループが出来、その後ろに15名、さらにバラバラ追いついた大きな先頭グループが出来、その中に長瀬が入る。ラスト1周に入るところではそのグループも人数を減らして15名になる。この先頭グループから2人デンマークの選手が飛び出し、さらにもう1人のデンマークの選手が合流し3人のデンマーク選手の逃げが決まり、チームタイムトライアル状態で16名の長瀬のグループに一気に30秒差をつける。長瀬のグループも追走がうまく行なえず、そのまま3名のデンマーク選手が逃げ切る。緩い登りでの16名の4位争いスプリントで長瀬は5位でゴールし、このステージ8位。ステージ6位までが獲得できるネイションズポイントにあとわずか届かなかった。長瀬のグループから30秒ほど遅れてメイングループで六峰、西川がゴール。中井もこのグループにいたがゴール前の道路の穴でホイール前後を潰して遅れてゴール。

第4ステージ
この日はTepliceをスタートして1周28.2kmの周回を2周半してドイツの国境を越えてALtenbergにゴールする85,3kmのコース。標高差600m以上で7kmほどの登りは15パーセント以上の勾配のある箇所もあり、登れる選手しか残れない非常に厳しいコース。コースが急遽変更されて最後の厳しい18パーセント以上の壁坂がカットされたがそれでも十分以上に厳しいコース設定。第2ステージのような厳しい下りではなく高速の直線の下りなので登りでの力だけで勝負が決まる。
登りの始まる10km地点で長瀬が落車。前輪交換して走り出すが、集団はすでに登りで長く伸びている。長瀬は後続選手らを全く違うスピードでぐんぐん追い抜かしていくが、先頭グループはすでに先をいっており、第2ステージと同じく致命的な遅れとなってしまう。1回目の登りで黒枝、中井は後ろのグループに、六峰、西川は1回目の登りのあとにまとまった70名ほどの第1グループに残る。長瀬は70名の第1グループから少し離されたグループまで上がってきたが、あと少しのところで復帰できなかった。2回目の登りで先頭集団はさらにスピードを上げてバラバラに。六峰、西川は第5グループあたりの20名ほどの集団でその後ゴールまでこなして行く。先頭グループでは第2ステージで優勝したロシアEvgeniyShalunovとイギリスの選手が逃げて最後の登りでEvgeniyShalunovが独走し、2位に2分以上差をつけてステージ2勝目。総合でもトップに立つ。六峰、西川は12分30秒以上遅れてゴールし、六峰がこの日57位。長瀬は19分遅れ、黒枝、中井は24分以上遅れて最終グループで完走。

第5ステージ
この日はTerezinをスタートして1周22kmの周回コースを4周してTerezinに戻ってくる101kmのコース。コースには2箇所登りがあり、そのうちの一つは標高差250mの3kmから4kmほどの登りがあり、最終日らしい厳しいコース。レースはスタートから速く、数名の逃げが決まりかけるがなかなか20秒以上の差が広がらず20km地点では集団は一つ。1回目の登りで西川が数名で遅れ、そのあとリタイア。この日はフランス、カザフスタンが非常に攻撃的なレースを仕掛け常に先行グループに選手を送り込んでいる。カザフスタンの1人逃げが決まるが2周目の登り頂上でまた集団は一つに。このスピードにこぼれる選手が続出。中井、黒枝もたまらず遅れだし20人ほどのグループで走っている。3周目には個人タイムトライアルで優勝したポルトガルのRaffael ReisとフランスのRomain Guyotが抜け出し集団に30秒以上差をつける。長瀬、六峰を含むメイングループは落ち着き、ラスト1周では1分以上のタイム差。ラスト1周の登りでは攻撃がかかり集団のスピードが上がり、さらに選手が少なくなっていく。最後の登り頂上を超えた時点で先頭2人と集団とのタイム差は1分50秒。ゴールまで10kmほどが下りと平坦であり逃げ切りが決定。結局2人は集団に1分20秒差をつけてフランスのRomain Guyotが優勝。長瀬、六峰を含む3位争いのメイン集団は最後の登りで37人までに減っている。ゴール前はこの日の朝に選手とともに通っているが、ラスト1kmで穴もある砂のういた鋭角コーナーがあり、そこの位置争いが非常に重要なポイントであったが、スプリント力のある六峰は7番手あたりの絶好のポジションで通過する際にノルウェーの選手と場所取り争いで絡まり落車。長瀬がこの日15位でゴール。トップから15分遅れて黒枝、中井がゴール。

個人総合優勝はロシアのEvgeniy Shalunov。完走者95名。

長瀬 63位 27分13秒遅れ
六峰 73位 32分50秒遅れ
中井 89位 53分22秒遅れ
黒枝 90位 54分43秒遅れ
西川 第5ステージでリタイア
池部 第1ステージでリタイア

チーム総合成績 19位

総括 今回のチェコでのネイションズカップは厳しかった昨年ドイツのネイションズカップ以上に厳しいコース設定で、どの国の参加選手も8月の世界選手権を見据えたメンバーであり、登れない選手は何もすることが出来ない非常に厳しいレースであった。昨年11月から強化指定選手を集めて合宿を4回行ない、登りの反復練習、タイムトライアルの練習を多く行なってきたが、今回参加した選手はその意味が理解できたことだと思う。その中で長瀬、六峰が総合成績では大きく遅れたもののステージでよい走りが出来たのは収穫であった。そして国内、アジアのレースでは経験できない密度の濃い集団走行も各選手問題なくできるようになっている。今回は非常に強い横風のステージはなかったが、風向きによりレースの動きが変わるということも、選手自身が肌身で体験できたことは今後の選手のレースでの動き方にも大きく影響を与えることでしょう。
昨年から大きな課題であったタイムトライアルにおける海外選手との力の差は今回も大きく11.6kmのコースで日本選手のトップタイムの長瀬で優勝者に1分33秒差をつけられている。1kmあたり8秒のタイム差である。3分18秒遅れの西川の場合は1kmあたり17秒の差をつけられていることになる。日本の練習環境事情もあるが多くの国内選手がTTの練習を行なっていない。独走力というのは世界で戦うことを目標にした場合は必ず身につけなければならないものであり、合宿でも毎回話しているのだが各選手には日頃の練習でも取り入れていただきたい。今回のTTではスタート後に登り区間もあったが、ほとんどが平坦、緩い下りである。ジュニアはギア制限で52×14までしか使えないが、アンダー23になりギア制限がなくなるとこの差はさらに大きく広がることになる。それでも合宿の際に昨年の遠征時に撮影したビデオを見せて、TTでのライン取り、ペース配分、TTヘルメットのレース時の被り方といった基本的なことを説明したが、それらに関しては各選手しっかり行えていた。
そのほかレース後の撤収の遅さなどなかなか直らないレース以外の改善点もまだ多くあるので、今後のジュニア遠征、合宿を通して改善してもらいたい。
次回6月のドイツでのネイションズカップでは登りがチェコほど長くはなく、日本の選手にも今回のレースよりチャンスはある。一部選手の入れ替えを行い、ドイツではネイションズポイントを狙い戦っていきたい。(柿木孝之)