公益財団法人日本自転車競技連盟(JCF)ロード部会は、2025年12月23日に第4回会合を開催し、「大学進学パスウェイの検討」「普及施策の構想」「国内レギュレーションの整理」について多岐にわたる議論が行われました。
出欠状況
出席者:加地/飯田/中梶/古家/松村/今西/川口/栗村/辻/樫木
欠席:別府/大庭
会合の概要
今回の会合では、前回に引き続きパスウェイの検討を行うとともに、普及施策として「全レース公認化」「全選手登録制度」「国内ランキングシステム構築」の包括的な構想が提示されました。
また、UCIレギュレーションの国内運用やツール・ド・おきなわの安全管理についても報告・議論が行われました。
パスウェイに関する議論
【大学進学パスウェイの現状と課題】
松村・川口両氏より、大学進学ルートにおける育成の現状と課題が共有された。
・パスウェイ明確化の意義
選手が目指すべき到達点を明確にし、現在地を把握できる仕組みの必要性が指摘された。
各段階での到達要件を示すことで、選手自身がキャリアを選択できる環境を整備する。
・大学とコンチネンタルチームの連携
大学在学中からコンチネンタルチームへのダブル登録を行う選手が増加。
UCIポイント取得機会の確保と、海外活動を視野に入れた育成体制の構築が議論された。
・入学制度の多様化
通信教育課程の活用により、競技活動と学業の両立が可能な事例(望月選手等)が紹介された。
スポーツ推薦制度と競技優先の両立における課題も確認。
・コーチング体制の整備
大学生選手へのコーチング提供における格差が指摘された。
JCF独自のコーチ講習制度の創設や、コーチングの質の標準化について検討。
【プロ選手の現状】
辻氏より、2026年シーズンのプロ選手動向について報告。
・ワールドツアーチームに日本人選手が所属しない状況(約15年ぶり)
・プロチーム(旧プロコンチネンタル)には新城・小山の2名が所属
・世界のプロ選手数:ワールドツアー521名、プロチーム386名(計約920名)
・女子:ウィメンズワールドチーム242名、ウィメンズプロチーム92名(計約330名)
普及施策の構想
部会長より、ロード競技の普及・発展に向けた包括的な施策構想が提示された。
【全レース公認化・全選手登録制度】
・基本方針
国内で開催されるすべてのレースをJCF公認とし、参加者全員を登録選手とする制度を目指す。
登録選手数の拡大を最優先事項とし、競技団体としての基盤強化を図る。
・全レース公認化の大義
国内の主催者・審判・指導者・競技者が一丸となって普及・強化・育成に取り組む体制を構築。
レースの安全性担保、統一レースフォーマットの整備、対外的発信力の強化を実現。
なお、レース公認についてはJCF規定に基づき実施する。
・主催者との連携
エントリーシステムにJCF登録機能を組み込む等、システム面での連携を行い、ユーザー・主催者双方の負担を抑える。
【国内ランキングシステムの構築】
・エリート向け
パスウェイとの連動、全日本代表選考への活用を想定。
強化指定選手の選考についても、ランキングを基準とすることで客観性を確保。
・アマチュア向け
年代別ランキングを整備し、競技参加のモチベーション向上と各地レースへの参加促進を図る。
【新カテゴリーの検討】
・普及促進のため、全日本ヒルクライム選手権、全日本エンデューロ選手権といった新カテゴリーの創設を検討
・入門カテゴリー(チャレンジクラス)の設置(機材重量制限等による参入障壁の低減)も視野に
【自転車登録システム構想】
・車検制度的な仕組みの導入による盗難防止効果
・公認ショップによるメンテナンス記録との連携
・損害保険制度の整備可能性
【国内関係者ネットワークの構築】
・主催者・メーカー・ショップ・選手・メディア等のネットワークを構築
・各ステークホルダーとの連携体制を整備し、普及施策の推進基盤とする
参考事例:AJOCCシクロクロスランキング
シクロクロス部会長の飯田氏より、AJOCCとJCFの連携経緯とランキングシステムの成功事例が共有された。
主催者団体との良好な関係構築がスポーツ振興の基盤となることが確認された。
UCIレギュレーションに関する議論
【UCIレギュレーションの国内レースでの非適用について】
・UCIからの回答として、ハンドル幅規制については技術規則に(N)マークがなく、各国連盟による独自規則の適用は認められないとの見解が示された。
・アジア人選手の体格を考慮したルール検討の必要性について、UCIへの働きかけを継続する方針を確認。
・無線通信機器については検討の余地があるとの回答を得ており、引き続き協議予定。
【ヘルメットレギュレーション変更】
・2026年1月1日よりロード競技に新規則を適用(バイザー付きヘルメットの禁止等)
・シクロクロスは2026年3月1日から適用(シーズン途中の混乱を回避)
ツール・ド・おきなわに関する報告
2025年大会において、安全管理上の問題点が散見された。
また、審判からの報告も個別にあがっているため、主催者との協議を行い、事実確認を進める方針。
総括
今回の会合では、普及施策の包括的な構想が初めて提示され、「全レース公認化」「全選手登録制度」「国内ランキングシステム」という三位一体の方針が共有された。
2025年度の最終会合として、来年度に向けた施策実行の基盤が整備された。
部会長コメント
本年最後の部会となりました。普及施策については、主催者・メーカー・選手それぞれのメリットを明確にしながら、段階的に実現していきたいと考えています。
シクロクロスの成功事例を参考に、ロードレースにおいても関係者との連携を深め、競技人口の拡大と競技環境の向上を目指します。
来年はオフラインでの部会開催も検討しており、より活発な議論ができればと思います。
今後の予定
次回会合では、以下の事項を中心に審議を行う予定です。
・パスウェイ2ルート案の具体化(大学経由/即挑戦)
・普及施策の実行計画と優先順位の決定
・国内ランキングシステムのポイント配分設計
・国内関係者ネットワークの構築方針
次回日程:2026年1月27日(火)
公益財団法人日本自転車競技連盟
ロード部会長
加地 邦彦




































