ジュニア男子ロードのネイションズカップTROPHEE CENTRE MORBIHANが5月20日から21日までの2日間3ステージで開催され日本ナショナルチームからは藤村一磨、渡辺一気、長島慧明、自檀地一、岡崎一輝、関口拓真が参加した。
この大会は長い登りはないものの起伏の多いアップダウンコースで、力のある選手が前でレースを展開していく厳しいレースになることが多く、過去にもレムコ・エヴェネプールやマチューバンデルポールなども優勝しており、世界のトップジュニア選手にとって重要な大会と位置付けられている。この大会に続いて開催予定だったスイスの伝統あるネイションズカップTOUR DU PAYS DE VAUDがキャンセルとなった影響もあるのかノルウェー、デンマーク、オランダなど現在のジュニアネイションズランキングトップ3が参加せず、そのほか数か国の強豪国も参加しておらず、ビッグレースで優勝するチャンスが広がり集団がより活性化することが予想された。
Stage1はGrand-Champの街をスタートして約100kmの大周回を回ってからGrand-Champ 周辺の5.8kmの周回を5周する128.9kmで争われた。レース前から風が強く吹く予報が出ており、追い風、横風による集団の分断が予想された。レースはスタートして速いペースで進むが大きなアタックはない。追い風が始まる直前の区間で関口がアタックするが、大きな動きにはつながらない。斜め後ろからの追い風区間前にベルギーなど強豪国が前で固まり隊列を作り、いよいよ本格的なレースが始まるかと思われたが長くは続かず集団は分断されない。例年のフランスネイションズカップはどの大会よりもレース展開が厳しくなるのであるが、今年は風があるにもかかわらず大きな動きが少ないままレースは進む。50kmあたりでそれまでに出来ていた逃げ集団に対して関口が追走し数名の選手と集団を抜け出したが、登り区間で遅れて集団に戻る。数名の逃げ集団と大集団のままレースが進む中、90km地点で強豪国が集団前方に集まり始めたタイミングで、前から3列目で大落車が発生し、日本選手6名は落車または足止めで完全にストップしてしまう。集団はこの影響で5つ以上に分断する。日本の選手は先頭集団には誰も残れず、藤村、渡辺は周回の2周目まではメイン集団が見えるところまで迫る集団で追走したが、横風区間もあり追走集団の足並みはそろわず追いつけなかった。
いつものこの大会とはレース後半まで異なる展開であったが、最後の周回コースに入ってからは集団では攻撃がかかり続け、横風の影響もあり厳しいレースとなった。それでも初めてのヨーロッパの集団走行となった自檀地、渡辺は前に位置取りし順応能力の高さをみせた。
Stage1
1FONTAINE Titouan(フランス) 2時間56分18秒
2WIGGINS Michael Ben(イギリス) 同タイム
3SANCHEZ Clement(PAYS DE LA LOIRE) 同タイム
82藤村一磨 6分9秒差
83渡辺一気 同タイム
96関口拓真 9分14秒差
101長島慧明 同タイム
102岡崎一輝 同タイム
109自檀地一 32分51秒差
stage2は平坦と登り区間を2か所含むREGUINYからEVELLYSまでの登り区間が2か所含む7kmのタイムトライアルで、ギア比規制がなくなった今年からよりタイムトライアルでの力差が見られるようになることが予想された。
この日は穏やかな天気でスタート順による風の影響もなく、コースは高速コーナーが2か所あるのみで単純に力差がタイムに反映された。藤村が優勝したベルギーのSENTJENS Senteから39秒遅れの24位が日本選手の最高位であった。日本の選手が苦手としている種目であり、今年からジュニアギア規制がなくなったこともあり、さらに差が広がる可能性がある。日本国内ではジュニアの個人タイムトライアルが開催される機会は非常に少なく、インターハイや高校選抜大会など主要大会でもこの種目がないため、重要視して積極的に練習に取り入れている選手は多くはいない。ただ若い選手にとっては選手の基礎ともなる重要な能力であり、この力差がロードレースでも動けるか動けないかに大きく影響する。強化合宿に参加する選手だけではなく、ジュニア選手には独走力をあげる練習にしっかり取り組んでもらいたい。
1 SENTJENS Sente(ベルギー) 8分29秒38
2 GIAIMI Luca(イタリア) 6秒差
3VANDEN HEEDE Lars(ベルギー) 11秒差
24藤村一磨 39秒差
54渡辺一気 1分3秒差
85長島慧明 1分23秒差
91関口拓真 1分34秒差
102自檀地一 1分59秒差
104岡崎一輝 2分2秒差
Stage3はLIZIOの街をスタートしてPLUMELECの周辺の丘陵地帯をこなしLOCMINEのアップダウンのある7.3kmの周回を5周する115.6kmで、個人総合リーダーのWIGGINS Michael Benを擁するイギリスがコントロールしながら進むことが予想された。レースはスタート後にスペインが複数名でアタックを続け、逃げの意思を強く見せる。それに応じる形でイギリス以外の各国も動き、昨日とは異なり速いペースの中からアタックが続く厳しい展開でレースがすすむ。6kmあたりで自檀地が落車し、膝を強打しリタイアする。
複数名のアタックがパラパラといく形で10名強の逃げが出来る。レース後半の周回コースに入ると逃げるのが厳しくなる中で、日本チームもこの逃げに入る動きをみせたかったが入れない。集団はイギリスがコントロールする形であるが、先頭グループの人数も多く、皆協力して逃げるため早いペースでレースは進む。その後先頭集団からこぼれる選手が出る一方でメイン集団から追走が入ったりする中で先頭集団は最大2分差をつける。周回に入るころには1分差を切るが先頭集団にも勢いがあり、メイン集団はペースを上げられるチームがあまりなく、逃げ切りの可能性も出てくる。周回に入る前に長島が遅れ、また渡辺が周回に入る直前の狭い下り区間で落車する。周回に入りペースの上がった集団に渡辺は何とかチームカーの隊列を使い復帰する。集団はイギリスがコントロールするが全員を吸収するまでの勢いはなく、勝負は3名まで減らした先頭集団で決まることとなり、最後はイタリアのBESSEGA Andreaが一人抜け出し優勝した。メイン集団には藤村、関口、渡辺が残り、イギリスのコントロールが緩くなったメイン集団ではアタックが頻発して追走が起こるがそこに加わることは出来ず、メイン集団でのフィニッシュとなった。
2019年以来4年ぶりのヨーロッパでのジュニアネイションズカップの参加であったが、日本の選手は勝負に加わる動きを見せられなかった。ジュニアネイションズカップでは、プロのレースとは異なり強い選手が自ら動いてレースを作っていく。集団の中にいるだけでは得られるものは少なく、いつのまにか前で動いた選手たちだけがレースをしている展開が多い。特に今大会の第3ステージはレース終盤までリーダーを擁するイギリスチームがコントロールする中で、レース前半から中盤と日本チームは逃げに入っていくチャンスが数回あった。さらにこの日は集団スプリントに向けてコントロールする意思を持ったチームがなく、リーダーチームだけがコントロールしていたため周回コースに入った後でもまだ前に動くチャンスはあった。ヨーロッパでのレース経験を積むチャンスが少ない中、集団からこぼれる恐れがある中で前に動くのは勇気がいることではあるが、今回参加した日本選手は、位置取りが悪くなければ皆集団にとどまるだけの脚は備えている。次に走る機会には、独走力の向上をはじめとした身体能力の向上をはかるとともに、前で動く勇気をもってレースに臨んでもらいたい。
1 BESSEGA Andrea(イタリア) 2時間40分11秒
2 BODET Vincent(TEAM31 JOLLY CYCLES) 9秒差
3SANCHEZ Clement(PAYS DE LA LOIRE) 同タイム
32関口拓真 13秒差
64藤村一磨 26秒差
68渡辺一気 同タイム
81長島慧明 16分差
83岡崎一輝 18分20秒差
DNF自檀地一
総合成績
1WIGGINS Michael Ben(イギリス) 5時間45分22秒
2FONTAINE Titouan(フランス) 11秒差
3SANCHEZ Clement(PAYS DE LA LOIRE) 同タイム
60藤村一磨 6分50秒差
63渡辺一気 7分14秒差
70関口拓真 10分38秒差
81長島慧明 26分14秒差
84岡崎一輝 29分12秒差