期間 2007年1月6日〜1月12日
2007年のスタートを切るナショナルチームが編成され、東アジアのマレーシアで行われるステージレースに参加。イラン、バーレン、UAE、デンマーク、ディスカバリーマルコポーロ、インドネシア、USA、香港、GIANT等の強豪19チーム、7日間でマレー半島をほぼ1周で争われる。近年東アジアではレースが盛んに行われており、日本以上の盛り上がりを見せ、アジアの選手のレベルも年々上がり強い選手も多くなってきているのが現状だ。
◆日本ナショナルチームメンバー
阿部 良之、飯島 誠、廣瀬 敏、清水 良行、増田 成幸、飯野 嘉則
●STAGE1
BENTONG−KUANTAN
距離 194,7km
気温38度
クアラルンプールから車移動で1時間の所からスタートする為に、朝が早く慌ただしく準備をしてスタート地点に向かうころには気温が上がり暑い。このステージレースを制する為には日本チームは最小限の努力で走りアタックを極力さけ、4日後のステージの為に体を準備するだけにとどめるよう指示を出すが、レースの初日は往々にして動きが激しくレースの行方を決める重要な日になる。
各チームの動きにあわせて走る日本チームは中盤すぎ廣瀬敏が先頭グループに入る、ここに数人で阿部良之が追いつき2人の選手をトップグループに送り込む事に成功し1分50秒の差がついた。しかし、この後寒い冬の日本から来た我々日本チームは暑さに苦しむ事になる、レースから少し離れていた選手の肉体を呼び起こすのには少し時間がかかるもので、無線で極力休んで体力の消耗を最小限に留める様に指示するが、自然の驚異には逆らえない。
氷で冷やしきった水と食料を供給し続けるチームカー。後続はマレーシアチームがスピードを上げて先頭を追っている、その後で飯島誠、清水良行、増田成幸、飯野嘉則が待機し次のアタックのチャンスをうかがっているがかなり暑そうだ。坂が緩く始まったところで逃げ遅れた有力選手のアタックが開始され15人ほどの選手が追撃開始された。ここにはイラン等の強力な選手が含まれており、飯島誠が逃さずグループに入る。この重要な逃げに入らなければ明日が無い日本の若者3人は、その場を読めず後方集団にとり残されレースを終わってしまった。飯島誠は力を温存して先頭グループに追いついていく、この時点で3人の日本の選手がトップグループに入る事に成功、その他、イラン、香港、デスカバリー中国の3チームが3人居るためにチーム総合の行方もこの3チームに絞られる。コースはスタートから最後まで何十もの丘を越える、一つ一つはたいした事が無いが、目に見えない疲労と暑さが選手の体力を確実に奪っていく。
後半30kmで飯島誠、イラン、香港がアタック、30秒ほど離れる。この逃げは次第に距離をあけて1分50秒、無線で指示を求めてきた。このまま飯島誠が引き続ければゴールまで行けるかもしれないが勝利は逃す。後方には廣瀬敏、阿部良之が居るから振り出しに戻っても日本チームに勝算はある。一度補給を取りに下がれと飯島誠を呼び、先頭交代の順番を変えさせ強制的に他のチームに先頭を引かせる状況を作らせる。スピードを落としたくないイラン、香港はやはり先頭交代を始め、それを確認した所で飯島誠を集団に戻す。
残り20km緩い坂を利用して飯島誠がアタックしイランが脱落、香港と2人でゴールを目指す。後方との差は以前1分50秒のままで差は詰まらない。残り10km、香港のスプリンターを連れて行くと不利と考え飯島誠がアタックし始める。切れそうな香港も何とか耐え切る。ここでけん制を繰り返す飯島誠と追撃グループとの差が次第に詰まってきている。このままではゴール前に吸収される最悪のパターンに成るために協力して逃げるように指示。後方は2名イラン、デンマークが猛追激、目視でも確認できるほどに迫る2人の後方に集団。残り3km、40秒まで迫るがここまで来れば大丈夫だ。迫るゴールを目指し飯島誠は最後の直線を先行しそのまま香港の選手を引き連れゴールラインを越え優勝をもぎ取った。
個人総合
1位 飯島 誠
2位 LAM、KaiTsun 香港
3位 SOHRABI、Mehdi イラン
13位 廣瀬 敏
21位 阿部 良之
74位 清水 良行
81位 増田 成幸
98位 飯野 嘉則
チーム総合成績
1位 日本ナショナルチーム
2位 香港 プロサイクリング
3位 イラン ペトロケミカル
●STAGE2
KUANTAN―KUALA TERENGGANU
距離 197.8km → 100.2km
天候 雨
昨夜より降り始めた雨は危険が伴う。集団は雨で冠水した道路を突き進む。今日も前半よりアタックが繰り返される。シューズンオフで眠った体はなかなか起きてこない日本の選手達は、昨日よりは動きが良くなっているものの、昨日の暑さで体に受けたダメージは大きい。東アジア地域の選手たちはこの暖かい気候の中で出来上がった体でレースを走っている為スプリントポイントでは圧倒的な力を発揮している。その隙を突き90km地点で数人の逃げが決まる。ここには清水良行が乗っておりタイム差を広げていくが2回目のスプリント手前5kmでいきなりコミッセールより今日のレースは道路に水溜りが多いのでキャンセルとの支持が出る、このまま集団はスピードを落としレースが中断し、逃げる清水良行は最大のチャンスを生かすことが出来なくて残念だった。
●STAGE3
KUALA TERENGGANU―KOTA BHARU
距離 161.4km
天候 雨
スタートから飯島誠のリーダーを守るのに先頭を固める日本チーム、各チームの攻撃をつぶしながら進む日本の選手たちは長い時間集団をコントロールしていく。この引きで小さなアタックはつぶしていけるが、それと同時にアシストの体力も消費されて行くために、山岳ステージまで力を貯めていくように指示を出し続ける。集団をコントロールするのも良いが体力の消耗は避けるようにさらに無線で指示を出し続ける、このままだと明日のステージの影響が出てしまう。それでも後半30km降りしきる雨と横風が吹き荒れるなか勝負に出た日本チームは、先頭交代のスピードを早め集団を分裂させることに成功した。3つに割れた集団、先頭グループは20名ほどで日本チーム全員が残っている。
残り3kmで飯野嘉則が単独落車で戦線離脱、カーボンハンドルが折れるが先行する集団が大事なために代車を使わず自力でゴールを目指させる。2kmで更に集団落車が起こり集団は小さくなる。ここで増田成幸、清水良行アシスト陣が力尽きる。ラスト1kmで今度は阿部良之、廣瀬敏が巻き込まれ戦線離脱、アシストを失った飯島誠は単独でゴール。ラスト1km以内でおきたトラブルの為にタイム差無しで阿部良之、廣瀬敏はゴールとみなされた。
第3ステージ個人成績
飯島 誠13位
阿部 良之 42位
廣瀬 敏 44位
清水 良行 95位
増田 成幸 96位
飯野 嘉則 98位
チーム総合
1位 日本ナショナルチーム
2位 香港プロサイクリング
3位 イランペトロケミカル
●STAGE4
BUKIT BUNGA―GERIK
距離 139.3km
天候 雨、晴れ
スタート前1時間のバス移動で11時スタート。日本チームが飯島誠を守りながら長い坂に突入していく、ペースで引く日本チーム対して、予想より早い段階でイランが動き出す、これは第一ステージから想定済みでここしか彼らの力の見せ所は無い。イランはGIANTに2名とペトロケミカルの6人が強力なアタックを繰り返し集団は長く伸びている。
集団は崩壊していき飯野嘉則が切れ清水良行が下がってくる。その直後、飯島誠、廣瀬敏、増田成幸を含む20名のほどの集団が視界にはいる。ここにはイランの選手が居ないためにすぐに集団が割れたことに気がついた。阿部の姿が無いために先頭集団に居ると確信してハンドルを握る。
この1月の始めに行なわれるレースに合わせるのは無理があり、この体調の状態ではどうしようも無い。集団との差が未だ1分ほどだから飯島誠のアシストの増田成幸を切り離し追撃するように指示をだすが、坂の勾配が緩いのと強い雨風の為に単独で追うことが出来ない為このまま飯島誠を廣瀬敏と共にアシストして残された距離で詰めるように先頭交代。この時点で先頭は3人すべてがイラン人だ、この3人の逃げは協力で後続グループにタイム差をどんどんつけていく、ここを追うグループは16人、もちろん阿部良之もこのグループだが先頭を引くことが無いために付いていくだけだ。
GIANT、イランチームとともに後方で待機して走る対照的にインドネシアのカザフの選手、香港チームがワンカンポの為に差を詰めようと懸命に動く。1000m級の坂を越え下りに入った所で先頭と阿部良之の集団は5分。そこからリーダーの飯島誠までの差は2分30秒、もうこの時点では飯島誠の先頭グループ得の復帰はあきらめなくてはならない。ここからは阿部良之のアシストに回るチームカーは、状況を阿部に伝え、一度後方にさがりチーム全員の食料と水を渡して先頭に戻る。阿部良之がここから切れる心配は無い。後は集団がけん制して後続グループが追いついてくるか、先頭を吸収して阿部良之が攻撃に出るかだ。そんな事を考えながら1時間が過ぎゴールが見えてきた。
このグループには同タイムの選手が居るために阿部良之のゴール着順も重要になる、無線でその重要さを伝え、ゴールぎりぎりまで見える範囲で指示、マークする選手の後方に回り、その選手が失敗しても離れないようにしてスプリントに入る、マークは的中し阿部良之としては良い感じでゴールした。その後飯島誠、廣瀬敏が数分後に続き、良く最後までアシストし最後の山で遅れた増田成幸がふらふらになり2名でゴール、さらに遅れて清水良行、飯野嘉則がゴールしてきた。
阿部 良之 11位
飯島 誠 29位
廣瀬 敏 39位
増田 成幸 45位
清水 良行 66位
飯野 嘉則 79位
チーム総合
1位 GIANT
2位 イラン ペトロケミカル
3位 インドネシア ポリゴン
4位 デスカバリーマルコポーロ
5位 香港プロサイクリング
7位 日本ナショナルチーム
(監督:三浦恭資)