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Results
MIXED ROAD RACE (CP 1/CP 2) Race distance: 24.2km
1 STONE David CP2_M GBR 45:05.33
2 NEL Riaan CP2_M RSA 48:32.85
3 FARRONI Giorgio CP2_M ITA 48:34.13
4 OGAWA Mutsuhiko CP2_M JPN 49:47.59
MEN”S ROAD RACE (LC 1/LC 2/CP 4) Race distance: 72.6km
1 TRIBOLI Fabio LC1 ITA 1:46:03.08
2 MERCIER David LC1 FRA 1:46:03.39
3 GALLAGHER Michael LC1 AUS 1:46:03.52
– ISHII Masashi CP4 JPN DNF
MEN”S ROAD RACE (LC 3/LC 4/CP 3) Race distance: 60.5km
1 KENNY Darren CP3 GBR 1:37:00.74
2 OCHOA Javier CP3 ESP 1:37:02.48
3 KVASNICKA Tomas CP3 CZE 1:38:01.19
19 FUJITA Masaki LC3 JPN 1:41:03.92
9月12日(金)ロード競技初日;
この日から北京パラリンピックはロード競技に。場所は、北京の中心地からは40キロぐらいだろうか、十三路とい うダム(貯水池?)の周辺コース。オリンピックのトライアスロンが行われたところとスタートゴールは同じ様子で、ただコースは反対側を走るようだ。1週 12キロ少々のコースで、厳しいコーナーや長くいやな上りもいくつかある。また、ゴール手前200メートルほどの所にUターンのようにぐるっと回る箇所が ある。ここは毎周回通るところ。パラサイクリングのコースは年々厳しくなっているが、今回が一番厳しいようにも感じる。
この日はロードタイムトライアルデー。暑さは厳しい。気温は32度前後になった模様だ。さらに、風が強い。体温調整が困難な選手や麻痺のある選手などには特に苦しいコンディションになっていたかもしれない。
日 本の先陣は、CP1/CP2(脳性まひ第1区分・第2区分)混合ロードタイムトライアルに出場の小川睦彦。CP2にカテゴライズされている小川だが、今大 会このクラスの種目はCP1のクラスと統合して行われ、また男女が混合されてひとつのメダル種目として行われる。そのため、障害の重さと男女差を考慮した パーセンテージ係数がTTには適用される。なお係数は、これまでの国際大会での競技結果を元に算出された。過去の例では、障害の重いクラスの選手が係数を あてはめた(つまりタイムを割り引かれた)結果上位に来ることが多く、特にこの種目ではそれが顕著になるのでは、と思われた。
CP2では、ま たもやイギリスのDavid Stoneが圧倒的な強さを今大会も披露。係数の不利をまったくものともせずに圧勝。昨年イギリスのコーチが“Davidは我々のシークレットだ”といっ ていたがその強さはさらに増大。誰もかなわず。小川は、タイムだけなら全体の4位だったが、他の選手に係数をあてはめられ8位まで順位を落とされた。しか し、これは想定の範囲内。翌日のロードレースで食いついていってほしい。このクラスは毎回新たな選手が出てくるが、今回はイタリアの選手が劇的なレベル アップを成し遂げた模様。4年前とはスピード・技術・スタミナどれをとっても比較にならないほど容易ではなくなっている。
CP4(脳性まひ第 4区分)の石井雅史がロードTT(距離24.8キロ)でも快走。粘って3位に食い込み銅メダル獲得。元競輪選手の石井だが、全プロロードで入賞経験がある など、ロード種目にも特性がある。前を走る選手を次々に捕らえて、36分10秒20でチェコやドイツ(世界チャンピオン)のライバルを振り切った。自転車 が何よりも大好きな石井には、この種目でのメダルもとてもうれしかっただろう。金メダルはやはり石井のライバルであり友人とも言えるスペインの Ceasar Neira。アベレージ41.448キロ。念願の金メダルに何度もガッツポーズをしていた。
LC3(運動機能障害3)クラスのロー ドTT(距離は同じ)では、藤田征樹も2周目に激しい追い上げで3位に入り、石井とアベックで銅メダルを獲得。タイム38分38秒96。ヨーロッパ勢がこ れまで圧倒的に強く歯が立たなかったRTTで石井とともに銅メダルを獲得し、日本チームは大いに沸いた。藤田はトライアスロンを長く行っており、そこで鍛 えた地脚・回転力・テクニック等を存分に生かしての好走。ゴール後はグッタリするほど目一杯の走りだった。 表彰式では満面の笑みとガッツポーズで応えて くれた。トライアスロンで鍛えた能力はこの競技に大いに役立つことを感じさせてくれた。
この日最後となった、男子視覚障害(B&VI)ロードTT には、大城竜之・高橋仁ペアが登場。これまで、視覚障害タンデムのロード種目はヨーロッパなどの強豪国にまったく歯が立たなかった。しかし、06年にこの ペアを結成してからは06年世界選ロードレース6位入賞など、互角に渡り合っている。高橋のテクニックに大城の粘りがうまくミックスした形。ただ、この日 のロードTTではタイムは伸びず、14位に終わった。最終日のロードレースに期待したい。
13日は、小川、石井、藤田がそれぞれロードレースに出 場。小川は今度は係数なしでの勝負。石井と藤田は、それぞれ他の障害カテゴリーと統一された種目としてレースが行われる。CP4の石井は、LC1/LC2 と一緒のロードレース。LC3の藤田はLC4/CP3と一緒のレース。いずれをとっても大混戦が予想される。
トラック最終日、日本は大城竜之・高橋仁ペア(視覚障害男子B&VI、高橋はタンデムパイロット)が出場するタンデムスプリントだ。
午前9時半か らの予選ハロンでは、10秒842という公式大会自己ベストをマークし、4位につける。1位はやはり強いイギリスのKappes/Storeyペアで10 秒536のパラリンピック新記録。しかし、彼らが持つ10秒410の世界記録には及ばない。2位がオーストラリアペアで10秒629、3位は南アフリカの 10秒641。大城・高橋ペアは十分に狙えるタイムだ。
昼からの1/4決勝では5位のカナダペアと対戦。危なげなくストレートで下し、準決勝へ。昨年同様、最強ペアのイギリスとだ。
1/4決勝は軽く流したイギリスペアを、大城・高橋は本気にさせた。準決勝1本目、逃げたKappes/Storeyを追ったが及ばず。上がりタイムは10秒747。2本目もまくれず、日本は3位決定戦へ。相手は、南アフリカのKilpatrick/Thomsonペア。
英・豪・南アフリカのいずれのペアも競輪選手顔負けの体格。しかし、大城・高橋ペアはタイム・技術では引けをとらない。
銅 メダルをかけた3位決定戦、1本目南アフリカはスタートから飛び出すという奇襲に。満員の場内が大いに沸く。まるで個人追い抜きのような南アフリカの走り を必死に追う日本。やがて追いつくと、今度は一気にスパート。最終バックでは南アフリカはあきらめ、1本目は日本が先取。
迎えた2本目、不可解な 事態が連発した。6周回のうち、3周回をまわり2角を出たところで南アフリカがインを切り込み日本も下がると、突然ピストルが打ち鳴らされる。いったい何 のことか分からず、客席で見ていた各国スタックも”おい、何があったんだ?”と両手を広げてた。“Re−start(再発走)だ”という説明を受け、アナ ウンスも流れた。それ以外、明確な状況説明は無いまま、再びスタート。今度は積極的に出た大城・高橋だったが南アフリカペアのまくりに屈して、1-1のタ イで3本目、と思われたが、電光掲示板には 3位RSA,4位JPN の表示が。 何かの間違いと思われたが、これで終わり、南アフリカの銅メダル、との 発表。 ピストルが鳴ったのは、日本の走行違反により2本目は日本降格・南アフリカが取った、Re−startは3本目となった、とのこと。
日本チームはこれに対して猛抗議したが、 結果は覆らず納得のいかない後味の悪い結果となった。しかし、まだ大会は続く。後半のロードも期待が持てるので、気持ちを切らすことなく、リフレッシュして挑んで欲しい。これは簡単なことではないが、そうしなければならない。
トラック3日目は、初日と逆に藤田征樹(LC3)が3キロ個人追い抜き、石井雅史(CP4)が1キロTTに出場。
石井雅史は、目標としてきたこの種目での金メダルを獲得した。
金メダルを確実にすることに主眼を置いたのか、スタートも慎重だった様子。何よりも金メダルを確証する走りに徹したようで、安定した走りは最後まで崩れなかった。UCI非公認の自己ベストには及ばないが、2位以下を引き離す走りでの金メダル。
ゴール後、手を上げて大歓声にこたえる。場内はこの日も超満員。バックスタンド前で班目監督とがっちり握手し、アンカーバイクから降りると、バックスタンドの大観衆に向かって深々と一礼。さらに大きな拍手歓声が石井に送られた。
表彰式では、日の丸が中央に上がり、君が代が場内に流れた。本当に感激のひと時だ。
これが今大会日本選手団全体にとって初の金メダル。日本選手団全体から石井への祝福.感謝の声が上がった。自転車にかかわるものとして、本当にうれしかったし、誇らしかった。
午前の個人追い抜き予選に出場した両足義足の藤田は、前半から快調に飛ばす。最後の1キロも1分18秒台でまとめ、予選タイムは3分52秒253。このカ テゴリーの世界新記録だ。しかし、この記録は次の組出走のSimon Richardson(イギリス)によってすぐに破られてしまった。 Richardsonのタイムは 3分48秒178。
午後の決勝ではこの2名の対戦となり、藤田は前半飛ばしてリードを奪うが、後半上げてきたRichardsonにかなわず、再び銀メダルであった。
トライアスロン経験者で、それを生かして昨年からパラサイクリングで活躍。トラックで2つの銀を獲得した藤田の今後がさらに楽しみだ。ロードでももちろん期待される。
オリンピックでもそうであったように、パラリンピックでもイギリス勢の活躍はすさまじい。Richardsonは昨年の世界選手権では全く目立たない存在 であったが、その後徹底したトレーニング.サポート体制があったのだろう、信じられないような伸びだ。イギリスは、健常者エリート(オリンピックチーム) と障害者パラサイクリングのナショナルチームが結びつきが強いようで、すばらしい支援体制がある様子。それが驚異的な記録と活躍につながっているのは間違 いない。ちなみに、片足義足のカテゴリー1キロTTもイギリスの選手が金メダルだったが、タイムは1分5秒台!オリンピックに出れるのでは、と思った。
日本はここまで4つのメダル(金1、銀3)を獲得。これまでで最高の成績だ。レベルが驚異的にあがっているここ数年だが、日本選手のタイムも内容も良い。 イギリスにはとても及ばないが、チーム編成.戦略などがうまくあたっているように感じられる。まだ競技は続くので、油断したり慢心することなく地道に邁進 したい。
大会名 2008年ロード世界選手権大会
開催場所 イタリア共和国・ヴァレーゼ
大会期間 2008年9月23日〜28日
派遣期間 2008年9月22日〜30日
選手団
監督 三浦 恭資(JCF強化コーチ)
コーチ 大門 宏(JCF強化スタッフ)
メカニック 齊藤 健吾(JCF強化スタッフ)
マッサー セルジオ ビアンキ(現地スタッフ)
選手 (6名)
男子エリート
野寺 秀徳(JPCA・スキル・シマノ)
井上 和郎(福井・NIPPO-ENDEKA)
新城 幸也(沖縄・梅丹本舗-GDR)
女子エリート
沖 美穂(JPCA・ザ・ワナビーズ・ナカマ)
山島 由香(大阪・サイクルベースあさひ)
萩原麻由子(群馬・鹿屋体育大学)
関連リンク:http://www.uci.ch/
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Results
MEN”S SPRINT (B&VI) FINALS
1 KAPPES Anthony/STOREY Barney GBR
2 DEMERY Ben/HOPKINS Shaun AUS
3 KILPATRICK Gavin/THOMSON Michael RSA
4 OSHIRO Tatsuyuki/TAKAHASHI Hitoshi JPN
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Results
MEN”S 1KM TIME TRIAL (CP 4)
FINALS
1 ISHII Masashi CP4 JPN 1:08.771 WR
2 BOUSKA Jiri CP4 CZE 1:11.189
3 SCOTT Christopher CP4 AUS 1:12.229
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Results
MEN”S INDIVIDUAL PURSUIT (LC 3) 3000m
FINALS
1 RICHARDSON Simon LC3 GBR 3:49.214
2 FUJITA Masaki LC3 JPN 3:55.535
3 GRAF Tobias LC3 GER 3:57.510
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Results
MEN”S 1KM TIME TRIAL (B&VI)
FINALS
1 KAPPES Anthony/STOREY Barney GBR 1:02.864 WR
2 DEMERY Ben/HOPKINS Shaun AUS 1:03.718
3 MODRA Kieran/LAWRENCE Tyson AUS 1:04.053
5 OSHIRO Tatsuyuki/TAKAHASHI Hitoshi JPN 1:04.593
9月8日(月)トラック2日目;
トラック2日目、日本人選手は、視覚障害(B&VI)男子1キロタイムトライアルに出場する大城竜之・パイロット高橋仁ペアのみである。初日の石井・藤田の銀メダル2つで勢いがついたのか、大城・高橋も素晴らしい走りを見せた。
16 組中11番目スタートの大城・高橋は、完璧なスタートダッシュで初周を20秒368で回り、その後もハイペースは衰えなかった。スタート以上に課題だった 最後の粘りも、新しいフレームに変えてからはブレが少ないためか、スピードが落ちない。豪のLindores/George組がこの日マークした1分4秒 792というパラリンピックレコードを上回るタイムを計時して迎えた最終周回は満員の場内から大声援が送られる。最後もたれることなく、大城・高橋は1分 4秒593のパラリンピックレコードでゴール。割れんばかりの大歓声の中、大城・高橋は何度も笑顔でガッツポーズ。応援していた家族・ファンに応えてい た。
すっかりプロ化したこのクラスでは、このパラリンピック記録(シドニー・アテネであれば世界新記録・金メダルだった)の寿命は残念ながら短いものとなってしまった。
南アフリカのペアやオーストラリアの残る2組が1分4秒130、1分4秒053、1分3秒718という記録を出していき、大城・高橋ペアは表彰台に上がることはできず。
最終ペアで世界チャンピオン・世界記録保持者のKappes/Storey組(英)はこれらをされに上回り、1分2秒864という桁違いのタイムで圧勝し、金メダルを獲得。
大城竜之・高橋仁は5位であった。シドニー・アテネであれば金であったが、それでも世界の強豪と激戦を展開し、満員の場内を沸かせたことは4日目のスプリントに向けて自信になったのでは。
パ ラサイクリング全体に言えることで、特にこのクラスには顕著だが、プロ化しているのが事実。イギリスペア・オーストラリアペアなどは、パラサイクリングが 職業のようだ。一方、日本ペアは2名とも仕事をしながらのトレーニング三昧の日々。それでもこれだけの好タイム・激戦を展開できることは彼らそして今回の 日本チームのレベル・意識の高さを物語っている、と感じる。
この日の大城・高橋ペアの予想を上回る好タイムで、日本チームはさらに盛り上がっていくことが期待される。3日目からも好成績を信頼したい。