■ 大会レポート 第6ステージ
第6Aステージ
開催日:8月29日(金)
コース:ラ・ロジエール〜ラ・ロジエール 41.6km
出走人数:121名/27ヶ国
第6Bステージ
開催日:8月29日(金)
コース:モンヴァルザン〜ラ・ロジエール 10.3km(個人タイムトライアル)
出走人数:113名/27ヶ国
ツール・ド・ラヴニール最終日は、午前と午後の2部構成でセミステージが開催された。どちらもアルプスの山岳地帯をふんだんに取り入れた山岳コースで、午前中の第6Aステージは距離41.6kmと短いが、獲得標高は1192mに達する。スタート後の長いニュートラル区間を経てイタリアに入り、リアルスタート直後から超級山岳の登坂が始まる。その後、国境となる1級山岳・サンベルナール峠を越えてフランスに戻り、最後は3級山岳でフィニッシュ。平坦区間が一切ない、極めて厳しい山岳コースだった。
さらに午後には、距離10.3kmで獲得標高690mの山岳タイムトライアルが行われた。こちらも登り一辺倒のコースで、今年のツール・ド・ラヴニールは最後の最後まで選手たちに過酷なステージを用意した。
第6Aステージは、冬のような冷たい空気の中でスタート。日本チームの林原聖真は、当初からこのステージに照準を合わせており、その狙いどおりの走りを見せた。スタート直後の超級山岳の登りで、集団はすぐに崩壊し、いくつもの小集団に分裂。先頭はマイヨジョーヌを含む優勝候補8名に絞られる展開となったが、林原は一つでも上位を目指し、イタリアチャンピオンらとともに20番台後半のグループで山頂を通過した。
下り区間でも危なげない走りで前を追い続け、徐々に順位を落としながらも日本チーム最高位となる区間44位でフィニッシュした。欧州でのレース経験が少ない大学生レーサーながら、入念な準備を重ねた林原が、今大会最後のロードレースステージでしっかりと存在感を示した。
午後のタイムトライアルでは、7日間の疲労が蓄積するなか、3名の日本人選手はそれぞれが全力を尽くして走り切り、タイムトライアルの日本チャンピオンである橋川丈が79位となった。
個人総合優勝を果たしたのは、U23カテゴリー初年度ながら優勝候補筆頭と目されていたフランスのPaul SEIXAS。第6Bステージでは2位に約30秒差をつける圧倒的な強さで区間優勝を飾り、最終日に逆転でマイヨジョーヌに袖を通して。すでにワールドチームに所属しており、近い将来グランツールでも活躍するだろう。
■ 清水裕輔監督コメント
前日に続き、厳しいヒルクライムコースでのレースだった。林原は、第6Aステージを狙って調子を上げてきており、27位以下の集団で超級山岳を越えた後、順位を落としてしまったが、それでも良い走りを見せてくれた。これまでの実力を発揮し、今後に繋がるポテンシャルを感じる内容だった。
全体を通してみると、ロードレースでは何とかなるだろうと思っていたものの、重要な局面で力の差を強く感じた。特に、身体の大きい登れる選手が増えている印象を受けた。これはこれからの日本にとって大きな課題となるだろう。
今回、選手やスタッフが日本の現状を理解したうえで、共にこの大会に挑んでくれたことに感謝している。そして、これからの課題にどう立ち向かうかをみんなで共有し、一緒に成長していけることを期待している。日本全体でステップアップし、より良い形を目指していきたい。
年々レベルが高まっていくことに変わりはないが、来年からは、ワールドチームとプロチーム所属選手が出場できなくなるため、育成段階の選手が活躍する大会に少しは戻るだろう。今年の大会に参加できたことは大きな価値があり、世界的に急速に変化する育成システムの次への変化も把握しやすくなる。ジュニアからアンダー、またトラック競技など他種目との連携を強化しながら、選手育成を進めていきたい。
まずは、出場に尽力してくれたスポンサーや支援者の皆様に感謝したい。ありがとうございました。今回の経験を次に繋げていきます。
■ 林原聖真コメント
レース序盤はコンディションが悪く、完走がギリギリだった。後半からコンディションを回復し、自分の走りができるようになった。第6Aステージで全力を出せるよう登りに特化した練習をしてきたが、最初の3kmを少し踏みすぎたのが反省点。それでも、トップとの差を強く感じ、絶好調でも戦えない自分の力不足を痛感した。初めて世界のトップレベルを感じ、自分の強みがここでは通用しないことを実感できた。その差を把握できたことが収穫だった。まだ自分は強くなっている途中だと思うので、今後も自分の強みをさらに伸ばすべく、トレーニングを続けていきたい。
■ 橋川丈コメント
ツール・ド・ラヴニールはU23のレースながら、みんなプロ並みに速くて、アジアでは絶対に体験できないような集団密度だった。ステージの多くが最初から最後までスピードがずっと速く、休む暇もほとんどなかった。トップ選手がどれだけ強いのか、実際に自分で体感できたのは大きな経験だった。ここでの経験を活かして、今後の目標に向かって、また頑張って取り組んでいきたい。
僕はアンダー4年目になるので、来年は出られないが、ここでしか味わえない経験があるので、世界をめざす日本の若い選手たちには、ぜひ出場してほしいと思う。
■ 岩村元嗣コメント
予想どおりレベルの高いレースだった。自分の練習方法では、まったく通用しないことがわかった。練習方法を変えないといけない。たとえば、高地トレーニング、また筋トレをして身体を大きくしないといけない。世界との差にU23の1年目で、早い段階で気付けて良かった。みんなが死に物狂いで前に行こうとしていて、エリートのレースより厳しいと感じた。総合成績を争うような選手になって、リベンジをしたい。
■ 鎌田晃輝コメント(第5ステージ落車リタイア)
2年ぶりの出場となった。初出場のU23の1年目は仲間のアシストしかできなかったが、今回はしっかり前でレースをし、前半のアタックにも参加できて自分の成長を感じた。ただ、総合でリザルトを残すには登坂力が必要だと感じた。第5ステージの落車は残念だが、強くなるためにできることはまだたくさんあると感じている。
この大会には、世界基準で走る選手が多く出場しており、こうした大会に出場しなければ自分が世界でどの位置にいるのか分からなくなる。日本だけで走っていても、ヨーロッパプロを目指す指標は見えない。ここで明確にした自分の課題を克服し、また強くなって戻ってきたい。
■ リザルト
(第6Aステージ区間成績)
1位 WIDAR Jarno(ベルギー)1:28:11
2位 SEIXAS Paul(フランス)+0:05
3位 FINN Lorenzo(イタリア)+0:05
44位 林原聖真 +9:13
50位 橋川丈 +13:00
57位 岩村元嗣 +13:07
(第6Bステージ区間成績)
1位 SEIXAS Paul(フランス)24.16,46
2位 NORDHAGEN Jørgen(ノルウェー)+0.27
3位 WIDAR Jarno(ベルギー)+0.32
79位 橋川丈 +5.43
88位 岩村元嗣 +6.06
99位 林原聖真 +6.35
(個人総合成績)
1位 SEIXAS Paul(フランス)18:51:01
2位 WIDAR Jarno(ベルギー)+0:40
3位 NORDHAGEN Jørgen(ノルウェー)+0.44
60位 橋川丈 +43:46
72位 岩村元嗣 +51:10
103位 林原聖真 +1:08:05
■ 派遣情報
大会名:2025 Tour de l’Avenir
カテゴリー:UCI U23ネーションズカップ
開催期間:2025年8月23日(土)~29日(金)
開催地:フランス・オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地方(Auvergne-Rhône-Alpes)
特別協賛:Team NIPPO(株式会社NIPPO)、弱虫ペダル
8月23日(土)プロローグ ティーニュ〜ティーニュ1800 3km(ITT)
8月24日(日)第1ステージ アオスト〜サン=ガルミエ 188.6km
8月25日(月)第2ステージ サン=シンフォリアン=シュル=コワーズ〜ヴィトリー=アン=シャロレ 136.7km
8月26日(火)第3ステージ エタン=シュル=アルー〜シャティオン=シュル=シャラロンヌ 158.6km
8月27日(水)第4ステージ モンタニャ〜ヴァル・シュラン 110.2km
8月28日(木)第5ステージ サン=ジェルヴェ・モンブラン〜ティーニュ2100 121km
8月29日(金)第6Aステージ ラ・ロジエール〜ラ・ロジエール 41.6km
第6Bステージ モンヴァルザン〜ラ・ロジエール 10.3km(ITT)
総走行距離 770km
■ 派遣選手
鎌田 晃輝(大阪・JCL TEAM UKYO/日本大学)※U23ロードレース アジアチャンピオン
渡辺 一気(北海道・京都産業大学)
林原 聖真(鳥取・明治大学/群馬グリフィン)
橋川 丈(福島・愛三工業レーシング)※U23タイムトライアル 日本チャンピオン
岩村 元嗣(大阪・早稲田大学)
望月 蓮(山梨・Team Buffaz Gestion de Patrimoine)
■ 派遣スタッフ
清水 裕輔 監督
中根 英登 コーチ
市川 貴大 メカニック
酒井 駿 メカニック
西幹 祐太 マッサー
坂本 拓也 マッサー
写真:Sonoko Tanaka