■女子ロード 優勝はイギリスのニコール・クック
8月10日・北京オリンピック3日目。暑さと湿度で過酷さを増した前日の男子ロードレースとはうってかわり、昨日行われた女子ロードレースは、降りしきる冷たい雨の中の死闘となった。優勝は、最終的に5人で争われたゴールスプリントを制したイギリスのニコール・クック(25)だった。日本からただ1人出場した沖美穂は最終周回上りでトップグループから離され、トップから53秒遅れの31位という成績だった。
一昨日の男子と同じく北京市中心部から北西に進み、万里の長城が壁を作る山岳地帯の周回ルートを2周回、総距離126.4kmで争われた昨日の女子ロードレース。北京市内は午前中ところどころ雨が降る天気だったが、午後は何とか持ち直し、午後2時のレーススタート時は曇り。気温28℃・湿度82%という天候だった。参加選手は33カ国から66人。3度目のオリンピック出場に悲願のメダル獲得をかける日本の沖美穂も、スタートの1時間ほど前に、スタッフとともにチームピット入りしていた。
<スタート前の沖選手のコメント>
体調は万全です。この日のために仕上げてきましたから。これが最後のオリンピックと思って北京に来たのですが、興奮も気負いもなく、これでいいのかなと思うぐらい冷静に今日を迎えた感じです。周回が2周だけなので、そこに入ってからはハイペースな展開になると思います。また序盤で数チームが逃げるという情報もあるので、もしそれが10数人のグループなら乗らないといけないし2・3人であれば最後のスプリントに備えようと思います。ポイントはやはり周回の上りですね。特に一回緩んだ後の2回目の上りは要注意です。そこでは集団の前にいることが重要ですね。今日のレースは自分のゴールなのでしっかり走りたいと思います。
レースは午後2時に北京市中心部の永定門前をスタート。1時間ほど走った辺りで天気は雨に変わった。序盤は集団に目立った動きはなく淡々とした走りが続く。沖の位置は集団前方。表情はいたって冷静だ。
スタートから2時間が過ぎ、もうすぐ周回コースに入ろうかというところで、ロシアのボヤルスカヤがアタックをかけた。ここが最初の勝負所と決めていたように、猛然とスピードを上げ独走態勢に持ち込んだボヤルスカヤ。もちろん後続の集団もこれを追ってスピードを上げる。沖の予想通り、ここまでの淡々とした走りは一転、一気にハイスピードのサバイバルレースの様相となった。雨は周回コースに入って激しさを増し、時折嵐を思わせる強い突風も吹き付ける。ボヤルスカヤは上り頂上までにおよそ1分の差をつけて逃げ続ける。後続のメイングループは、イギリス、リトアニア、スウェーデン、アメリカあたりが中心となって前を追う。沖も集団前方に位置取りチャンスの到来を待つ。下りに入ってもフルパワーでペダルを踏むボヤルスカヤ。追う集団も同様だ。雨にかすむ視界。滑りやすい路面。落車アクシデントもすでに何度か起きている。
午後4時55分、残り1周のフィニッシュラインをボヤルスカヤが通過。その後ろは、集団から抜け出したイギリスの選手が30秒ほど遅れて通過。その10秒ほど後にメイングループが通過。ここに来てメイングループを構成する人数もかなり減ってきた。このメイングループから抜け出し前を追うのはイギリスのプーリーにイタリアのグデルツォ。2人は上りに入って5分ほどでついに先頭のボヤルスカヤを捕らえる。しかしそれもつかの間、今度は後続のメイングループが前を行く3人を捕らえ、トップは再び大きな集団に戻った。そしてここから、クライマックスに向けての最後の攻防が始まった。集団からは勝負をかけたアタックが頻発。今年の10月で50歳になる驚異のベテラン、フランスのジャンニ・ロンゴも積極的にこの攻防に加わっている。
最後の上り頂上手前でイタリアのグデルツォがアタック。10秒ほどのアドバンテージで頂上を通過する。これを追って集団から抜け出したのはスウェーデンのヨハンソン、イギリスのクック、オーストリアのソーダー、そしてデンマークのセラプの4人。この4人は共同して先行するグデルツォを追い、ついに残り9Km地点で捕まえる。ここでトップに5人、後続はおよそ15秒差で15・6人の集団だ。長い下りが終わる残り1km地点、タイム差は依然15秒。勝負はトップグループ5人に絞られた。
最大限の緊張感を保ったままゴール手前の上りにさしかかった5人。そして残り200mの表示板がある辺りで5人が一斉にスパート。これを僅かの差で制したのは、イギリスのニコール・クックだった。
日本の沖は、グデルツォが抜け出した最終周回上り頂上付近での攻防で後れを取りトップグループから脱落。3度目のオリンピックを53秒遅れの31位という成績で終えた。
<ゴール後の沖選手のコメント>
我慢して我慢してついていってたのですが、最後は、集団が分かれる動きに付ききれなかったですね。でもヨーロッパでずっとやってなかったらこんなに走れなかったと思うので、今日の自分のレースには満足しています。結果は結果として見るしかないのですが、同じレースは一つもないし展開はいつも違うので、今日の結果は実力通りだと思います。力は出し切れたと思うしヨーロッパでやってきたことの証明は出来たと思います。
[公式WEBサイトによる]
Women’s Road Race
Race Distance: 126 km ( Point-to-point 78.8 km + 2 laps of 23.8 km )
1 COOKE Nicole Great Britain 3:32:24
2 JOHANSSON Emma Sweden
3 GUDERZO Tatiana Italy
31 OKI Miho Japan 3:33:17
■男子ロードレース 優勝はスペインのサミュエル・サンチェス
北京オリンピック競技初日となる9日、男子ロードレースが北京市中心部から万里の長城に至る総距離245.4Kmのコースで行われ、気温30℃前後、湿度85%という過酷な気象条件の中、スペインのサミュエル・サンチェスが、最後6選手によるゴールスプリントを制し初優勝を遂げた。オリンピック・ロードレースにおけるスペインの金メダル獲得もこれが初となる。日本から出場した宮澤崇史はサンチェスから31分35秒遅れて86位完走。別府史之は、コース後半に設定された周回コースを残り3周でリタイアという結果だった。
レースは55の国と地域から143人の選手が参加して、午前11時に北京市中心部の永定門前をスタートした。北京市が誇る歴史遺産を右に左に見る市街地ルートをおよそ5Kmほど行ったところでチリとボリビアの選手が抜け出し先頭グループを形成する。2人は共同して快調に逃げ、一時は後続のメイングループとの間に15分近い差をつけた。そのメイングループでは細かなアタックはあるもののさほど大きな動きには至らない状況が長く続いていたが、60Kmを過ぎた辺りで起こったアタックから集団が分裂。25人ほどの追走グループが形成された。先頭に2人、10分ほどの差で25人の追走グループ、それから1分半ほどの差でメイングループ。レースはこの図式で後半の周回コースに入っていった。宮澤・別府の2選手は、100人を超えるメイングループの中でじっと戦況を見守っている。周回コースは一気に上って一気に下る1周23.8Kmの行程。これを7周回でゴールとなる。
1周目。先頭の2人の内、疲れが見えるボリビアのガラルドが離れ、チリのアルモナシドの1人逃げとなる。追走グループは最初の上りで一気にタイム差を詰め、上り頂上の八達嶺では4分差にまで縮めてきた。メイングループもこれに併せるようにスピードが上げる。
2周目に入るところでトップと追走グループの差は4分11秒。メイングループとの差は8分36秒。そしてこの周回の上り頂上を過ぎた辺りでトップのアルモナシドが追走グループに吸収、20人規模のトップグループが形成された。この中には、今年のツール・ド・フランスを制したスペインのサストレの顔もある。宮澤・別府は依然メイングループの中。ともに中段から前段の好位置をキープして終盤の展開に備えている。
3周目。レースは小康状態。タイム差は僅かに前後するのみ。
4周目。上りでトップグループからウクライナとベラルーシの2人が抜け出す。これに反応して2人を追う追走グループと後方のメイングループのスピードが一気に上がる。ゴールまでは残り4周回。
5周目。トップの2人と追走グループの差は1分40秒。メイングループとの差は2分51秒。周回半ば、メイングループにいたアテネ大会の覇者、イタリアのベッティーニがパンク。集団に後れを取る。そして何と、前の周回までメイングループの中で余裕を持って走っていたように見えた別府が、先頭から8分51秒遅れてフィニッシュラインを通過。そのうつむき加減にゆっくりとペダルを踏む姿にはもう戦う意欲は感じられない。
残り2周となる6周目。この周回に入る直前で先頭の2人にメイングループから追い上げてきた3人が合流してトップグループが5人に。その後ろは28秒遅れてメイングループ。先頭を引くのは、サストレ、コンタドール、サンチェス、バルベルデという豪華な顔ぶれのスペイン勢。その後ろにはベッティーニ、レベッリンのイタリア勢が続く。本命の登場に刺激を受けた集団はぐんぐんスピードをあげ、上り頂上でトップグループを吸収、30人ほどの集団で下りに入った。こうしたゴールに向けての激しい攻防が繰り広げられる中、日本の宮澤崇史が先頭から8分6秒遅れでフィニッシュラインを通過した。
そして最終周回。先頭で残り1周の鐘の音を聞いたのは、6周目の下りで抜けだしたオーストリアのファンベルゲル。しかし上り途中で14・5人の追走グループに捕まる。そして、上り頂上手前でルクセンブルグのシュレックがアタック。これにイタリアのレベッリン、スペインのサンチェスが反応してトップは3人となる。それを必死に追うのはオーストラリアのロジャースとロシアのメンショフ。その差は15秒ほどだが、なかなか縮まらない。そんな中、後方から一気にスピードを上げて追いついてきたのはタイムトライアル世界チャンピオン、スイスのカンチェッラーラだ。このカンチェッラーラの追い上げに乗ってロジャース、メンショフの2人も勢いづき、ついにゴール手前800m付近で先頭は6人に。そして勝負はゴールスプリントに持ち込まれ、スペインのサンチェスがパワフルな走りでこれを制し、オリンピックチャンピオンの称号を手にした。
<別府史之コメント>
タフなレースできつかったです。最初のラップからきつかったんですけどペースが速かったというのもあったので。2周目3周目は走れてたんですけどラスト3周のところでペースが一気に上がって、そこでちょっと集団の中切れもあって遅れてしまいました。このレースのためにかなり仕上げてきたつもりだったんですけど、結局僕自身の体が弱かったっていうだけですね。あと暑さにもやられました。1周するごとにボトル3本飲んでましたから。これまで競技をやってて、上って1リットル以上飲んで下ってまた1リットル以上飲むという経験をしたことがなかったので、すごく辛かったですね。暑いのが苦手なんで頭に水をかけたりして何とか対処してたんですけど…。一生懸命サポートしてくれたスタッフの人とか、応援してくれた人たちに申し訳なかったという気持ちでいっぱいです。
<宮澤崇史コメント>
楽しかったですね。コースは思ったより難しかったしとにかく暑くて参りましたけど、今回は自分なりに100%準備ができ、100%力も出し切れたと思います。ただ展開は自分が予想した通りだったので、もっとコースが自分向きだったら、もう少しいい成績が残せたんじゃないかと思います。でも今回は100%自分の力を出せたことで良しとします。
いよいよ2008年8月8日午後8時(現地時間)、第29回オリンピックが開幕した。自転車競技はロードレースが9日に男子ロード、10日女子ロード、13日に男女タイムトライアル。トラックレースが15日からの5日間で男女10種目。新競技BMXが20・21日。そしてマウンテンバイクが22日に女子、23日に男子の日程で行われる。
本日行われる男子ロードレース出場の宮澤崇史・別府史之の2選手は、一昨日、本コースを入念に試走、昨日も午前中再び本コースに出向き最終調整を行った。今大会のロードコースは、北京市中心部の永定門前をスタート地点に、天安門や故宮博物院などの世界遺産エリアを走り抜け、北西方向におよそ80km行った先の万里の長城・居庸関から、1周23.8kmの周回コースを巡る設定だ。明日の男子はこの周回コースを7周回して総距離245.4km。女子は2周回で総距離126.4kmのレースとなる。最高標高地点は、観光スポットとして世界的に有名な万里の長城・八達嶺で標高は650m。そこに至る道はかなりの急坂で終盤の勝負所になるのではと予想される。標高差は全行程通しておよそ600m、周回コースのみだとおよそ360mとなっている。スカッと晴れて周囲を見渡すことが出来れば、これぞまさに中国!といった光景が次から次に展開されるはずだ。レースは本日朝11時(現地時間)にスタートする。
<三浦恭資コーチの話>
コースはこれまでのオリンピックコースと比べるとそんなに難しくはないと思う。アップダウンがいくつもあるようなコースではなく上って下るという単純な設定なのでスプリンターでもこなせるだろう。勾配もそれほどではないので軽いギアも必要ないのでは。上手く逃げグループに乗れた場合や、ゴールスプリントになった時良い位置をキープできれば、2人にもチャンスはあると思う。2人とも体調に問題はなく、集中力も良い感じで高まってきているようだ。
オリンピック公園 8月8日午後1時現在 気温32.9℃ 湿度53%
[公式WEBサイトによる]
Men’s Road Race
Race Distance: 245 km ( Point-to-point 78.8 km + 7 laps of 23.8 km )
1 SANCHEZ Samuel Spain 6:23:49
2 REBELLIN Davide Italy
3 CANCELLARA Fabian Switzerland
86 MIYAZAWA Takashi Japan 6:55:24
BEPPU Fumiyuki Japan DNF
2008/08/06日本代表選手団入村式
北京オリンピック開幕まであと2日となった6日、オリンピック・ヴィレッジ(選手村)では日本代表選手団の入村式が行われた。今回の日本選手団は過去最多の525人という規模だが、今日までに北京入りしている選手たちはすでに最終の調整段階に入っていることもあり、式に参加したのは選手・スタッフ併せて55人と少なめだった。自転車チームもオリンピック初出場の宮澤崇史、別府史之の男子ロード2選手が昨日選手村入りしていたが、機材調整と練習コースでの乗り込みのため入村式には参加しなかった。
この日の練習は、選手村から60kmほど離れた指定コースでの乗り込みを3時間半ほど。本コースでの試走は明日行われる予定だ。
<宮澤崇史選手コメント>
選手村は思ったよりきれいで快適ですね。食事も問題ないです。有名選手の顔を見つけたりするとオリンピックに来ていることを実感します。本番が近づくにつれ緊張感というより集中力が高まってきた感じがします。
<別府史之選手コメント>
選手村は思ったよりきれいですね。食事もおいしいです。ここにきて緊張感は徐々に高まってきています。昨日乗れなかったので、今日は足馴らしのつもりで走ってきます。
先週末に開催されたワールドカップ第5戦(Bromont – CAN)で、
末政がDHで7位、4Xで3位に入賞した。
7/26-27、MTBワールドカップ第4戦 Mont-Saint-Anne(カナダ)大会で末政実緒がDH 4位、4X 2位に入賞した。
その結果、ワールドカップランキングはDHが暫定7位、4Xは暫定3位に付けた。
本日午後、東京・文京区の東京ドームホテルにおいて、北京オリンピックおよびパラリンピックの壮行会が行われた。
NHK BS1で放送される北京オリンピック直前特集番組で、メダルが期待される男子選手ということで伏見選手が取り上げられる。
番組名 「輝け!真夏のアスリートたち〜北京オリンピック直前特集〜」
放送日時 2008年7月29日(火)
19:10〜20:00(第1部)、20:10〜21:00(第2部)
※伏見選手に関する放送は第2部の予定です。
NHK BS1(NHK衛星第1チャンネル)
※上記、初回放送終了後の21:15〜21:20まで
「GO!北京オリンピック2008夢にかけるアスリート−伏見俊昭−」
が同じくBS1で放送される。
※再放送予定
8月2日(土)15:10〜16:00、16:10〜17:00
8月3日(日)25:10〜26:00、26:10〜27:00
関連リンク:http://www3.nhk.or.jp/olympic/