公益財団法人日本自転車競技連盟(JCF)ロード部会は、2026年2月24日に第6回会合を開催し、「アジア選手権の総括」「ロードレースの安全性」「全日本選手権の運営」「競技普及施策の進捗」について議論を行いました。
今回はロードナショナルチーム日本代表監督の清水裕輔氏を特別ゲストとして迎え、現場の視点を交えた議論が行われました。
出欠状況
出席者:加地/飯田/中梶/古家/今西/松村/樫木/大庭/辻/斉藤
特別ゲスト:清水 裕輔(ロードナショナルチーム日本代表監督/自転車普及協会・TOJ担当)
会合の概要
今回の会合では、2月に開催されたアジア選手権(サウジアラビア)の結果報告と課題分析を中心に、ロードレースの安全性に関する方向性の確認、全日本選手権タイムトライアルの出場資格見直し、UCIとのコミュニケーション結果の共有、および競技普及施策の進捗報告が行われました。
アジア選手権の総括
【大会結果報告】
清水監督より、アジア選手権(サウジアラビア開催)の全カテゴリーにわたる詳細な結果報告が行われた。
今回は選手・スタッフ合わせて約30名が参加した。
・男子エリート
タイムトライアル7位、ロードレース最高8位。昨年比でポイント獲得数が約半分にとどまった。ワールドツアーレベルの選手による攻撃に対応しきれず、勝負どころで主導権を握られた。
・女子エリート
トラック日程との調整によりロード選手メインの2名派遣。小林選手がアジア上位と戦える実力を証明。追加2名の派遣があればメダル圏内の手応え。
・男子U23
望月選手がタイムトライアルで本来4位相当のタイムを記録するも、ペナルティにより8位。ロードレースは最終局面で実力差が出たが、育成を見据えた選手選考。
・女子U23
トラック選手中心の派遣。水谷選手がタイムトライアル6位。機材面の差を埋めればメダル圏内。ロードレースでは岡本選手が単独で抜け出し7~8位に健闘。
・ミックスリレー
昨年の金メダルから一転、機材面の差が大きく影響し7位。女子の強化が進めばメダル獲得のチャンスがあるカテゴリー。
・ジュニア男子
松村選手がタイムトライアルで大差をつけて金メダル。ロードレースでも3位。
・ジュニア女子
石川選手がレース展開を作りながら2位。強化体制が結果に結びついた。
【課題と今後】
・他国の強化が選手層・機材面ともに着実に進んでいる
・スタッフのルール知識強化が必要(ペナルティの防止)
・遠征用機材(TTバイク、ローラー台等)の整備が急務。他の強化国が連盟で最新機材を準備しているのに対し、日本の選手は個人で手配しており出発前に疲弊する状況がある
・派遣基準の整備について、選手強化委員会との連携を強化する方針を確認
シクリスム・エコー賞の推薦
ロード部会からの次世代選手(ジュニア以下)推薦について議論が行われ、アジア選手権で活躍した選手の推薦を決定した。
発表をお楽しみに。
ロードレースの安全性に関する議論
【方向性の確認】
部会長より、ロードレースの安全性について以下の二つの選択肢が提示され、部会としての方向性を確認した。
1. 一定のリスクを受け入れ、レース数を維持する
2. レース数が減る可能性があっても、安全性を徹底的に高める
議論の結果、部会として後者の方向性を全員一致で支持した。
主な意見として、以下が共有された。
・日本の社会・文化的背景を考慮すると、事故発生時の影響は甚大であり、リスク受容型は現実的ではない
・ロードレースの開催にあたっては地域住民の理解が不可欠であり、安全への信頼が前提条件である
・ステージレースができることへの感謝は共有しつつも、悲しい事故の可能性をなくしていく努力が必要
・安全対策のルール整備と並行して、選手自身の技術向上も推進すべき
【具体的な取り組み】
・コース視察の徹底と、安全基準を満たせないレースへの対応の明確化
・大会後のレポートが正直に上がる仕組みの構築。現状では、審判が次回以降の派遣に影響することを懸念し、問題点の報告を控える構造的な課題があるとの指摘があり、審判派遣体制の見直しを含めた対応を検討する
・6月目処でガイドライン・規定案の叩き台を作成する
全日本選手権に関する議論
【タイムトライアル出場資格の見直し】
事務局からの確認を受け、全日本選手権TT出場資格の審議が行われた。
・現行のTT選考基準がロードレースの実績に依存している問題が再確認された
・国内にTT単体レースがほぼ存在しないため、参加資格取得の場が極めて限られている
・エントリー時にロードおよびTTの主な実績を記載してもらい、ロード部会が選考委員会として過去の実績に基づき選考する方法で合意
・開催地(宮崎)のコース特性を踏まえ、参加枠の拡大も検討する
・ロードレースの出場資格基準は現状維持とし、発表を行う
※ タイムトライアルの出場資格の詳細については、別途発表される大会要項をご確認ください。
【U23とエリートのレース分離の可能性】
清水監督より、ナショナル選手権においてU23とエリートのレースを分離開催し、同一選手が両カテゴリーでUCIポイントを獲得する戦略的可能性について報告があった。
・ウズベキスタン、タイ等の国が既に実施し、国別ランキング向上に活用している
・オリンピック前年の国別枠獲得戦略として有効
・一方で、開催コストの増大、運営負担等の課題がある
・引き続き実現可能性を検討する
UCIとのコミュニケーション結果
部会長より、以前の会合で懸案となっていたUCIへの確認結果が報告された。
【ハンドルバー幅規制】
・日本国内の非UCIポイント対象レースに限定して、より狭いハンドル幅の使用を認めるローカル規定の導入が可能かをUCIに打診したが、認められなかった
・UCIの見解:車検のオペレーション上困難であること、およびハンドル幅と落車・故障の因果関係に科学的根拠がないとの2点が理由
・この結果、ジュニア以上の全カテゴリーにおいてはUCIルール通りの運用
となる
・ただし、ユース以下については各国でレギュレーションを作成してよく、案があればUCIが検討するとの回答
【無線規制】
・UCIの公式見解は、無線による聴覚遮断が事故反応を遅らせるというもの
・選手が慣れたコースでの実験的使用許可について、引き続きUCIへの提案を行っていく方針
コンチネンタルチーム登録の日本人選手比率
国内UCIレースにおいて日本人選手の獲得ポイントが低い現状について議論が行
われた。
・現行ルール(チーム登録の半数を日本人とする)は維持しつつ、これ以上の制限については慎重な意見もあった
・UCIの平等原則との整合性を確認する必要がある
・主催者側から招待条件として日本人選手比率を設定する方法も選択肢として議論された
・UCIに対し、チーム登録および主催者側の両面でどこまでの制限が可能かを確認する方針
競技普及施策の進捗
【チャレンジクラス(仮称)】
・国内メーカー各社との対話が進展し、非常にポジティブな反応を得ている
・特定のレギュレーションを一方的に決定するのではなく、メーカーと協力しながら最適解を見出す方向
・フレーム、コンポ、ホイール等のパーツメーカーを含めた連携体制の構築に向けた準備が進行中
【ロード競技の現状把握】
・総務委員会からの要請に基づき、ロード部会報告書を作成中
・JBCFの登録者数は近年減少傾向にあるが、マーケティング活動により若干持ち直しの兆しがある
・年代別では10代の登録者数が伸びている傾向
・男女比は女子約6%と極めて低く、是正が必要
・地域別では関東が最多で中部が続き、関西が少ないという不均衡がある
報告事項
【ツール・ド・おきなわについて】
・前回指摘した安全管理上の課題について、文書での釈明を求めたところ回答が得られたが、十分な内容ではなかった
・引き続き先方との対話を継続し、改善を求めていく
【U15/17ギア規制の変更】
・ロード競技においてもギア規制を「推奨」に変更する方針が確定
・ルールブックのWeb版は既に修正済み。4月以降の大会から適用される見込み
【全日本選手権におけるレイトエントリーの取り扱い】
・全日本選手権におけるレイトエントリーの運用について確認が行われた
・出場資格を有する選手について、参加枠に余裕がある場合はレイトエントリーを認める運用とする
・日本一を決めるレースにおいては、有資格者の出場機会の確保を優先するという考え方に基づくもの
・競技運営委員会において引き続き協議する
【大会情報発信の改善】
・アジア選手権期間中のレポート発信の遅延やSNS運用の課題が指摘された
・現場スタッフは情報を送付しているが、日本側での発信体制に課題がある
・広報担当者の不在が根本原因であり、事務局との調整および部会への権限委譲を含めた体制整備を進める
総括
今回の会合では、アジア選手権の詳細な総括を通じて、日本ロード競技の国際的な立ち位置と今後の強化課題が明確になりました。
特にロードレースの安全性については、「徹底的に安全性を高める」という方向性で部会の意志が統一されたことは、今後の具体的な施策推進にとって重要な一歩です。
また、チャレンジクラスをはじめとする普及施策も、メーカーとの対話を通じて着実に前進しています。
部会長コメント
今回、清水監督にゲストとしてお越しいただき、アジア選手権の生の声を部会で共有できたことは非常に有意義でした。
他国の強化が着実に進む中で、日本が機材面・体制面で遅れを取りつつある現状を直視しなければなりません。
ロードレースの安全性については、レース数が減る可能性があっても安全性を徹底的に高めるという姿勢を部会として明確にしました。
6月を目処にガイドラインの叩き台を作成し、具体的な基準づくりに取り組んでまいります。
チャレンジクラスについては各メーカーとの対話が順調に進んでおり、連携体制の構築に向けた準備が着実に進んでいます。
引き続き、競技の発展と安全の両立を目指してまいります。
今後の予定
次回会合では、以下の事項を中心に審議を行う予定です。
・ロード安全性ガイドラインの叩き台提示と議論
・全日本選手権TT選考方法の最終確定
・メーカーとの連携体制に関する進捗報告
・パスウェイの最終案確定
・ロード部会報告書の最終確認
公益財団法人日本自転車競技連盟
ロード部会長
加地 邦彦



































































